Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年10月4日 No.3379  再生可能エネルギーの主力電源化に向けた政府の取り組みを聞く -資源・エネルギー対策委員会企画部会

政府が再生可能エネルギー(再エネ)の主力電源化に向けた検討を加速していることを受け、経団連は9月20日、東京・大手町の経団連会館で資源・エネルギー対策委員会企画部会(長井太一部会長)を開催し、資源エネルギー庁の山崎琢矢新エネルギー課長から、再エネの主力電源化に向けた今後の展望について説明を聞いた。説明の概要は次のとおり。

■ 再エネが置かれた現状

再エネは国際的にみると、近年の大幅なコスト低下を背景に世界で導入量が劇的に拡大しており、主力の地位に近づいている。

一方で日本の再エネコストは高く、概ね欧州の2倍の水準となっている。固定価格買取制度(FIT)による2018年度の買取費用総額は3.1兆円と、2030年度のエネルギーミックスで想定した3.7兆~4.0兆円に急速に迫っている。今後は負担増を抑制しつつ導入量を拡大する必要がある。

■ 第5次エネルギー基本計画の策定と今後の検討

新たなエネルギー基本計画では、CO2フリーの国産電源であり、世界では低コスト化が進む再エネについて、主力電源化が不可逆の方向性であると位置づけた。特に2050年に向けては、「経済的に自立し脱炭素化した主力電源化を目指す」と明記している。

こうした状況を踏まえ、8月から「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」を再開し、主力電源化に向けた検討を進めている。

■ 主力電源化に向けた当面の論点

再エネの主力電源化に向けた当面の論点は次の4点が挙げられる。

  1. コストダウンの加速化とFITからの自立化
    FIT国民負担の増加に伴い、産業・業務用電気料金に占める賦課金の割合は平均16%に達している。加えて、過去に相対的に高い買取価格で認定を受けて未稼働のままになっている案件が今後稼働すると、さらなる負担増が見込まれる。こうした国民負担の増大に対処する必要がある。
    加えて、2020年度末までに実施するFIT法の抜本見直しも見据えつつ、入札制の拡大やFITから自立したビジネスモデルの構築等に向けた取り組みについても検討していく。

  2. 長期安定的な事業運営の確保
    地域との共生は持続可能な再エネ事業の要件である。しかし、災害対応等の安全面や景観・環境影響等の面で地元との調整が難航する案件が出ている。特に日本の再エネは小型太陽光が極端に多く、住宅地での急な建設、略式の施工等がトラブルの元になっている。必要な規律を確保し、再投資が行われるような事業環境をつくるため、工夫が必要である。

  3. 次世代電力ネットワークの構築
    再エネ拡大に向けて新たなネットワーク(NW)投資が必要となる。政府としては、次世代NWへの転換を進めつつ、NWコストの抑制と再エネ発電コストの大幅な低減により、再エネ導入コストを全体として低減していく方針である。近日中に新たな検討の場を設置して議論を進めたい。

  4. 産業競争力と技術革新の追求
    欧州では大手電力が再エネにも積極的に投資しているが、日本は小規模なプレーヤーが多い。産業競争力・自立化の観点から検討が必要である。また、分散型リソース等を活用する新たなプレーヤーの参入を促す取り組みについても検討したい。

【環境エネルギー本部】