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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年10月18日 No.3381 マイナンバー制度の発展に向けた施策について聞く -行政改革推進委員会企画部会

講演する水町氏

経団連は9月26日、東京・大手町の経団連会館で行政改革推進委員会企画部会(大久保秀之部会長)を開催した。宮内・水町IT法律事務所の水町雅子弁護士から「マイナンバー制度の発展」をテーマに講演を聞いた。概要は次のとおり。

■ マイナンバー制度の概要

行政手続き等において、住所や氏名を用いて本人確認を行う場合、転居や改姓、表記揺れが生じるなど、同一人物かどうかの確認が容易でない。番号制度は迅速・正確な本人確認を可能とし、情報の検索・管理・連携を促進する。

このため、見込まれる効果としては、(1)本人確認の簡素化による行政事務の効率化(2)災害時の住所異動に対応した被災者支援の迅速化(3)納税者と支払者の提出書類の突合を通じた正確な所得把握(4)制度や組織の壁を越えたきめ細かな社会保障の実現(5)行政から国民に対するプッシュ型での情報提供――が考えられる。

一方でマイナンバー(個人番号)により、個人情報が意図せず知られることなどへの国民からの不安の声もあり、制度上、さまざまな保護措置が設けられている。

第一に、個人情報は従来どおり各機関で分散管理され、個人番号を含む共通データベースが構築されることはない。

第二に、個人番号で新たな情報を取得することはできず、税務署は所得や経費情報、自治体福祉課なら福祉情報というように、公務員は自らの業務に必要な個人情報しか把握できない。国民の間には、破産歴や逮捕歴があった場合、個人番号を通じて勤務先に知られるとの誤解もみられるが、税・社会保障・災害対策に用いる番号のため、そのような情報と個人番号はそもそも紐づかない。

第三に、個人番号の利用や提供に厳格な規制を課している。仮に個人番号を個人情報と同じ規制にすると、オプトアウトや共同利用により本人同意のない外部提供が認められてしまい、インターネット上で個人番号付きで破産情報や詐欺被害情報を掲示することも理論上は可能となる。個人番号は生涯変わらず、悪用されると重大な影響ももたらすことから、悪用を防止しつつも、必要な場面では正しく利活用できる制度とすることが意識されている。

■ 発展に向けた課題

マイナンバー制度には問題点が少なからずあり、国民・企業・行政の立場から課題を整理し、改善に取り組む必要がある。

国民目線では、制度のメリットや内容がわかりにくいという問題がある。マイナンバーカード1枚で住民票の取得やパスポートの更新を不要とする、マイナポータルを通じて個人番号や住所・氏名変更を通知できるようにする、制度の導入効果・実績をわかりやすく広報するといった施策が必要となる。

企業目線では、個人番号の収集・保管だけが課せられ、具体的なメリットが得られないという問題がある。従業員や顧客の名寄せに活用することや、保険金や預貯金の存在を受取人・相続人に知らせるために活用すること等が想定される。民間利用の解禁に向けては、国民がメリットを実感できる具体策を提案する必要がある。

行政目線では、制度の導入に伴い業務量やシステムコストが増大するという問題がある。既存の業務フローを見直すとともに、システムの設計を工夫する必要があり、国によるICT人材の確保が不可欠である。

【産業政策本部】

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