1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2018年10月18日 No.3381
  5. 対米外国投資委員会の審査権限拡大などについて解説

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年10月18日 No.3381 対米外国投資委員会の審査権限拡大などについて解説 -米国投資規制に関するセミナーを開催

経団連は10月3日、東京・大手町の経団連会館で、米国のモルガン・ルイス法律事務所からジョヴァンナ・チネリ弁護士、ケネス・ナネンキャンプ弁護士、ナンシー山口弁護士を招き、米国投資規制に関するセミナーを開催した。講演の概要は次のとおり。

■ CFIUSの審査権限強化を目的としたFIRRMA法

今年8月、米国において、国家安全保障の観点から、対米外国投資委員会(CFIUS)の審査権限を強化する「外国投資リスク審査近代化法(FIRRMA法)」が成立した。簡易申告制度導入、審査期間の変更、慣行プロセスの成文化や重要インフラ・重要技術に対する審査範囲拡大などが行われ、日本企業による米国での投資にも影響が生じるおそれがあり、今後制定される規則を含め動向を注視していく必要がある。

CFIUSは1975年に設立された財務省、国務省、商務省や国防総省など複数の省庁によって構成されている省庁間委員会組織であり、外国企業などによる対米投資について、米国の国家安全保障に対する脅威が存在しないか審査を行っている。2007年以降、権限などに関する改正は行われてこなかったが、16年前後に中国企業による米国ハイテク産業への投資が特に活発化したことなどから、米国内で警戒感が高まったこともきっかけの1つとなり、17年11月にFIRRMA法案が提出された。

FIRRMA法により最長で120日を要することになる審査期間の変更に伴い、日本企業による今後の米国での投資案件については、4カ月から6カ月にわたるCFIUS審査期間を見込んだスケジューリングを行うべきである。また、CFIUSが過去から広く網を張り審査対象を選定する、キャッチ&リリース方式を採用してきた点を忘れてはならない。簡易申告制度を利用した自主的申告を事前に行うことも含めて、CFIUS審査の要否を事前に慎重に検討し、事後的にCFIUSから審査を要求されて投資案件が否定されることのないように留意すべきである。

なお、今般の改定で一部不動産が審査対象外とされたものの、国防総省がいまだ懸念を示しており、今後CFIUSの審査対象に加わる可能性がある点については、あらかじめ注意しておく必要がある。

■ 中国にサプライチェーンを持つ日本企業の懸念

FIRRMA法により、中国からの投資に対するCFIUSの影響力が拡大する。日本企業が最も関心を寄せている、中国にある日本の関連子会社やサプライチェーンが関与する米国投資において、CFIUSの審査が必要となるかどうかについては、投資者情報、投資の実態や、重要インフラやテクノロジーの有無などの総合的な要素を踏まえたうえで、判断されることになるだろう。  FIRRMA法で定められたすべての項目が発効しているわけではない点を理解しておく必要があり、今後、審査中にプロセスなどの変更を要求される可能性に備えておくことが求められる。

【国際経済本部】

「2018年10月18日 No.3381」一覧はこちら