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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年10月25日 No.3382 味の素と味の素ファンデーションからベトナムにおける栄養課題解決に向けた取り組みを聞く -知的財産委員会企画部会

経団連は10月4日、東京・大手町の経団連会館で開催された知的財産委員会企画部会(堤和彦部会長)において、ルール形成戦略の実践に向けた意見交換を行った。

味の素の本橋弘治執行役員食品事業本部副事業本部長と、味の素ファンデーションの栗脇啓シニアアドバイザーから、ベトナムにおける栄養課題解決に向けた取り組みについて説明を聞いた。説明の概要は次のとおり。

■ ベトナム学校給食プロジェクト(本橋氏)

味の素グループは、創業以来一貫して、事業を通じた社会課題解決に取り組み、地域や社会とともに価値を創造し続けることで経済価値を生み出し、成長してきた。これら「社会価値」と「経済価値」の創造の連鎖を「ASV(Ajinomoto Group Shared Value)」と呼び、味の素グループの事業活動そのものと位置づけ、全世界で取り組みを行っている。

ベトナムでは、農村部の貧困層を中心とした低栄養と、都市部の過剰栄養という栄養不良の課題がある。学校給食は、献立作成が学校の教師・調理スタッフ任せで栄養計算がなされず、メニューや品数が限られていた。そこで、ベトナム味の素は、学校給食を通じた児童の健康状態改善と食育を通じた保護者・児童の行動変容を支援する目的で、2012年から「学校給食プロジェクト(SMP)」を開始した。

SMPは、大都市の小学校から始め、全国展開した。栄養バランス献立の導入支援のため、献立作成ソフトウエアを開発。ベトナム政府に粘り強く働きかけ、ソフトウエアの全国導入が政府に承認された。全国の小学校での導入に向け、支社・営業所の営業メンバーが小学校を訪問してソフトウエアの使用説明を行い、関連する製品紹介や受注も行っている。また、各地でモデルキッチンにより衛生管理の改善を支援する取り組みも行っている。

経費の全額をベトナム政府や自治体に拠出してもらうことはできず、ベトナム味の素からも一部持ち出しとなり、外務省の協力事業からも拠出してもらった。事業の必要性を、外国政府や自治体、日本の在外公館によく理解してもらうことが重要だ。

■ ベトナム栄養制度創設プロジェクト(VINEP)(栗脇氏)

VINEPは、ベトナムで正しい栄養知識を持つ人材を育てるために、ベトナム国立栄養研究所と味の素が合意してスタートし、味の素ファンデーションが引き継いだ。

政府や関係者への働きかけが奏功し、12年に教育訓練省が栄養学課程の設置を承認。13年にはハノイ医科大学の栄養コースが開講し、17年にはベトナム初となる43名の「栄養士」が誕生した。また、その間、栄養士が公務員の職業として法的に認定された。現在は、標準教科書の刊行や具体的な栄養管理プロセスのルール化を推進中であり、VINEPは日本栄養士会、臨床栄養に秀でた大学、大学病院の協力を得て、オールジャパンの取り組みになりつつある。

日本の持つ「ソフトパワー」を、海外でのルール形成に生かすという視点が重要である。栄養という切り口では、日本は、栄養士の層に厚みがあり、学校給食も全国に普及し質もよい。また、世界一の健康長寿国であるという実態もある。日本のよさ、それを支える成熟した仕組みや制度を海外で理解してもらい、ルールづくりに生かすことは、日本に求められる重要な役割である。

【産業技術本部】

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