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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年11月1日 No.3383 21世紀政策研究所講演会「トランプ政権にどう向き合うか」を開催

講演するケネディ氏

21世紀政策研究所は、米国プロジェクトの一環として10月11日、東京・大手町の経団連会館で講演会「トランプ政権にどう向き合うか」を開催した。ノースダコタ大学プレジデントのマーク・ケネディ氏が講演し、続いて久保文明研究主幹(東京大学大学院法学政治学研究科教授)と対談した。ケネディ氏は、ビジネスマン、元米国連邦下院議員といった多彩なキャリアをもち、ジョージ・ワシントン大学大学院ではロビイングの仕方など政治の実務について教鞭を執った。講演会では、企業活動のみならず米国の政治動向を見る際の“シェイプホルダー(Shapeholder)”の重要性などについて語った。
講演会および対談での発言要旨は次のとおり。

■ シェイプホルダーへの対応

企業は株主(シェアホルダー)、従業員、顧客、取引先といったステークホルダーへの対応だけでなく、ポリティカル・アクティビスト(政治的な運動に従事している人)やメディア、政治家、規制当局などのシェイプホルダーへの対応も求められている。シェイプホルダーは、企業と直接の利害関係をもたないが、ビジネスやマーケットの外にあって、企業の事業活動に影響を与える(shape)。

企業としては、シェイプホルダーに適切に対応することが重要であり、対応を誤った企業は打撃を被ることとなる。適切に対応するには、広報・PR・社外とのコミュニケーションを有効に機能させることはもちろんのこと、グローバルかつビジネスに限定されない、広い視野が必要である。また、1社だけでなく他社と連携して対応する(“仲間”をつくる)ことが有効な場合もある。ただし、一部を除いて、米国の大学でもシェイプホルダーへの対応のあり方については、まだ十分にカリキュラムが組まれていないのではないか。

■ 「デジタルの力」によるアクティビズムの増大

ポリティカル・アクティビストの行動の動機は、ビジネスの世界におけるような経済的なものというよりも、その人自身の信念、宗教、世界観、価値観などであることが多い。それらの動機は、最終的にはお金で解決し得るビジネスの世界よりも妥協が難しく、だからこそ企業にとって対応が難しいといえる。

フェミニズム、マイノリティー、環境保護など政治的なアクティビズムが台頭し始めたのは半世紀も前の話であるが、近年、スマートフォンの普及、ツイッター、フェイスブックといったSNSやユーチューブの利用など「デジタルの力」を通じて新しい媒体が発達し、人々がそれぞれの望む方法で政治的な意見を発信することが可能になった。そのことがアクティビズムの力を増大させた。シェイプホルダーは、そのような新しい現象を踏まえた概念である。なお、米国では、上記の媒体に加えTVニュースの多チャンネル化など、人々が自分の好む媒体で情報を取り入れるようになったことが、社会の分断化が進んだ一因になっている。

■ 米国政治への働きかけ

議院内閣制の国と違って、米国は議会が大統領から独立した強い権限を持っている。政治への働きかけは、ワシントンでのロビイングだけに限らない。トランプ政権の意思決定の過程は見えにくいが、そのようななかで日本企業としては経営トップだけでなく、米国各地にいる従業員(すなわち有権者)が、それぞれの地元選出の連邦議員などと頻繁に接触し、幅広く連邦議員に自社の立場を理解させ働きかけることも有効な方策の1つである。連邦議員は地元の有権者の声に耳を傾ける。トランプ大統領も、いかに有権者の関心を引くかに心を砕きながらツイートしている。

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21世紀政策研究所では、今後もセミナー・シンポジウム等を通じて情報発信を行っていく予定である。

【21世紀政策研究所】

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