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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年11月8日 No.3384 「過労死等防止対策セミナー~過労死をなくすために、いま職場で何ができるか」を開催 -働き方改革 toward Society 5.0 リレーセミナー第3弾

経団連は10月23日、東京・大手町の経団連会館で「過労死等防止対策セミナー~過労死をなくすために、いま職場で何ができるか」を開催し、企業の人事や安全衛生担当者など約150名が参加した。

最初に、川人博弁護士(川人法律事務所)が「企業に求める過労死等防止対策」について、続いて、木下潮音弁護士(第一芙蓉法律事務所)が「職場における過労死等防止対策」について講演した。次に、労働者健康安全機構過労死等防止調査研究センターの高橋正也部長から「過重労働と過労死等との関係」について、最新の調査研究結果に基づき解説があった。最後に、筑波大学大学院の松崎一葉教授が「職場におけるストレス対策」について具体的な実例を挙げて説明した。各講師の講演の概要は次のとおり。

■ 川人氏

過労死等(脳・心臓疾患、精神障害)の労災認定件数は年間約800件、うち死亡事案は年間約200件。多くの職場で過労死等と不適切な労務管理は同時に発生しており、いわば過労死は企業の病理の表れだ。そのため、企業内で過労死等が発生した場合には、労働時間やハラスメントの有無などを社内調査しなければならない。業績困難部門や繁忙部門でその多くが発生しており、企業として長時間労働是正に取り組むと同時に、個々の職場に人員を増やすなどの特段の改善を図るべきである。この過労死等の問題は、日本社会全体で対処しなければ防ぐことはできない。今年7月に見直された「過労死等防止対策大綱」をもとに、商慣行等の改善を踏まえた発注条件・発注内容の適正化など、関係者間で働きかけを強めていくことが求められている。

■ 木下氏

過労死等防止を考えるうえで、「認定基準」を押さえておく必要がある。脳・心臓疾患では、特に長期間の過重業務に留意し、1カ月法定時間外労働(休日労働含む)100時間超または2~6カ月平均80時間超にならないよう、事業者が管理しなければならない。精神障害は、労働時間とともに心理的負荷についても注意する必要がある。適切な労働時間管理には、何が労働時間となるのかを、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(2017年1月)に基づき把握しなければならない。自己啓発なども労働時間になることを踏まえつつ、在社時間と労働時間に矛盾がないことを確認すべきである。

■ 高橋氏

15~17年度の調査研究からみると、脳・心臓疾患の発症時年齢は50歳代が多く、発症6カ月前から時間外労働が80時間を超えていることも多い。精神障害の発症は30歳代に多く、男性では「恒常的長時間労働」、女性では「心理的負荷が極度」が主な負荷要因となっている。また、業種別でみると、脳・心臓疾患、精神障害ともに「運輸業・郵便業」の発生率が高い。

■ 松崎氏

「働き方改革」と「生産性向上」という、一見相反する目標に対する職場のあきらめ感を払拭するためにも、ストレスチェックの「集団分析」を有効活用すべきだ。具体的には、分析結果をもとに、どの部署がどの業務に対し困難を抱えているか細かくチェックしたうえで、業務改善を講じることが大切である。たとえノルマが課される仕事でも、本人に時間の裁量があったり、やりがいを感じたりしている場合、心身のストレス反応は少ない。つまり、ストレスとは物理的な量ではなく主観であり、適切な労務管理の実施によりメンタルヘルス不全の削減は可能となる。社員本人にできることは、自分自身の性格を熟知したうえで、「労働には限界があること」を念頭に、労働時間とパフォーマンスの関係性を理解することである。

【労働法制本部】

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