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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年11月22日 No.3386 規制改革の成果と課題について聞く -行政改革推進委員会

経団連は10月30日、東京・大手町の経団連会館で行政改革推進委員会(山本正已委員長、筒井義信委員長)を開催した。昭和女子大学の八代尚宏特命教授から「規制改革の成果と今後の課題」をテーマに講演を聞いた。概要は次のとおり。

■ 規制改革の推進体制の歴史と今後のあり方

経済活動のグローバル化や情報通信技術の高度化、人口減少・高齢化社会の進展など、経済・社会の環境が変化するなか、規制改革の推進体制も見直されている。

具体的には、1998年に発足した「行政改革推進本部・規制緩和小委員会」のころから本格的な検討が始まり、「総合規制改革会議」等を経て現在の「規制改革推進会議」へと変遷してきた。会議体の名称に表れたように、取り組みの目的も、既存の規制を緩める「規制緩和」から、効率的な規制に見直す「規制改革」へと変化した。この間、国の行政サービスの実施主体を競争入札で決める「市場化テスト」や、地域限定での規制の特例措置である「国家戦略特区」等の手段が設けられた。

来年7月に設置期限を迎える規制改革推進会議の後継組織のあり方としては、(1)会議体の特色を明確化し、政治的に困難な課題や新しい規制の構築にも踏み込むこと(2)経済財政諮問会議と一体化すること(3)国家戦略特区との役割分担で全国展開に向けた評価機能を担うこと(4)旧行政管理庁のような常設事務局を設置し、規制改革に関する機関記憶を蓄積すること(5)公正取引委員会と連携し、競争政策を強化すること――等が考えられる。

■ 今後の重点分野

さらなる改革が必要な重点分野としては、以下の4つが重要と考える。

1つ目は雇用である。未来投資会議で高齢者雇用や中途採用の拡大を議論しているが、高齢者の活用に不可欠な定年制の廃止が欠けている。これには同一労働同一賃金の導入で年功賃金の抑制、職務や勤務地を限定した正社員の雇用ルールの明確化、解雇の金銭補償制度の導入が必要となる。いずれも日本型雇用慣行全般の見直しを視野に入れて検討すべきだと考える。

2つ目は農業である。(1)減反の実質的な廃止(2)企業による農地取得(3)農協改革――等を通じたコメの生産性向上や国際競争力強化が欠かせない。

3つ目は介護・保育である。高齢化や女性の就業増加に伴う成長分野であるため、(1)混合介護の弾力化(2)企業と社会福祉法人との公平な競争(3)介護と同様な保育保険の設立――等により急増する需要に対応する必要がある。

4つ目はシェアリング・エコノミーである。ライドシェアは例外的にしか認められず、貨客混載も使い勝手が悪い。民泊については、住宅宿泊事業法により年間の営業日数規制が設けられたほか、規制改革推進会議と国家戦略特区が別々に議論を進めたことから、2つの異なる制度が並存してしまった。世界の潮流や既存資源の有効活用の観点から、シェアリング・エコノミーをさらに推進することが求められる。

◇◇◇

経団連に対しては、第2次臨時行政調査会で掲げた「増税なき財政再建」の基本路線を目指す観点から、公共サービスの民間委託など民間活力の発揮に向けた規制・制度改革の後押しを期待したい。

【産業政策本部】

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