経団連のアメリカ委員会企画部会(守村卓部会長)は11月19日、初来日したテキサス州サンアントニオ市のロン・ニーレンバーグ市長をはじめとする一行と懇談した。経団連は今年5月に経団連訪米ミッションでテキサス州を訪問し、ニーレンバーグ市長と懇談している(5月31日号既報)。懇談の概要は次のとおり。
■ サンアントニオ市の特性
サンアントニオ市は、日本からの直行便が就航していないこともあり、日本人の印象にも残らず、小さな都市というイメージが強いが、実は全米第7位の大きさを誇る都市である。企業が進出した地域に早期に浸透、定着するためには、現地のローカルサポートを得ることが重要になるが、サンアントニオ市はこの点において優位性を持っている。サンアントニオ市は、市内に所在する軍事基地とともに発展を遂げた都市だが、日本の米軍基地に所属していた米国人も多く、親日的な都市であり、他都市と比較しても日本企業は現地のローカルサポートを受けやすい環境にある。
また、初めて海外に進出する企業などにとっても、事業を営むのに適した都市だといえる。サンアントニオ市で海外事業に挑戦し、その後軌道に乗れば地域を広げて事業展開するといったシナリオを描くことも可能である。現に、サンアントニオ市に拠点を設けた外国企業が事業に成功し、メキシコに進出した事例もある。サンアントニオ市はゲートウエーの役割も果たしており、日本企業にとって魅力的な都市だと確信している。
サンアントニオ市は急速な発展を遂げた都市であり、労働力が豊富なうえに、若い世代の教育や訓練にも優れている。最近では産業もクラスター化しており、なかでもサイバーセキュリティ分野においては全米でもトップレベルの技術を持ち、サイバーセキュリティの主要都市として評価されている。サンアントニオ市には空軍サイバー司令部や第24空軍なども所在し、官民問わずサイバーセキュリティ関係の資産が豊富にそろう。
■ 米国連邦政府による通商政策
近年、連邦政府が打ち出す通商政策については懸念を持っている。NAFTAの見直しや米中貿易摩擦については、サンアントニオ市に進出する日本企業にも影響を及ぼす可能性があることから注視している。連邦政府のグローバルな通商政策が、州や市などのローカル経済にも影響を及ぼすという点を連邦政府に伝えていかなくてはならない。
メキシコと隣接するサンアントニオ市では、メキシコの豊富な人材や資源を利用し事業を営む企業も多い。自動車業界においては、一次サプライヤーもメキシコとの関係強化を図っており、NAFTA見直しについては関心が極めて高い。サンアントニオ市に進出する企業のビジネスに支障が出ないよう支援していきたい。
米中間の通商摩擦も関心が高いが、中国は、多くの米国企業にとってもサプライチェーンの一部であるのが実情である。本来自由であるべき国際貿易に対し制限措置を課すことは、最終的に米国ひいてはテキサス州の経済に悪影響を及ぼすことになると考えており、連邦政府に対し積極的に進言していく。
今年はサンアントニオ市300周年という節目の年である。サンアントニオ市にとって欠かすことのできないパートナーである日本企業との関係をさらに強化し、共に成長していきたい。
【国際経済本部】