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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年12月13日 No.3389 デ・グフト・ブリュッセル自由大学欧州研究所長と懇談 -日欧協力の重要性について/ヨーロッパ地域委員会

デ・グフト所長

経団連のヨーロッパ地域委員会(佐藤義雄委員長、越智仁委員長)は11月28日、東京・大手町の経団連会館で、日EU経済連携協定(EPA)交渉開始当時の欧州委員会貿易担当委員であり、現在はブリュッセル自由大学で欧州研究所長を務めるカレル・デ・グフト氏との懇談会(座長=清水章同委員会企画部会長)を開催した。デ・グフト氏の発言の概要は次のとおり。

■ 日EU EPAの意義

近年、貿易・経済面の国際秩序の維持コストを米国がどの程度負担する用意があるのか不明確になってきた。日欧が戦略的・経済的関係の強化に共通の利益を見いだしているのは、こうした文脈に位置づけられる。その象徴例である日EU EPAは、日EUが自由貿易を多角的でリベラルな秩序の中核に位置づけていることを示している。EPAの主要な目的は、貿易障壁を撤廃し、また、規制を調和させることによって日欧の企業が貿易しやすい環境をつくることである。さらに、基準を最高水準あるいは国際規範にあわせ、日EUの貿易相手国もそれを守ることでグローバル・ルールが形成されていく。

関税の引き下げ・撤廃、地理的表示の保護のほか、EPAの重要な成果は規制協力に関する章を設けたことである。また、持続可能な開発、中小企業、パリ協定を含む気候変動にもコミットしており、日EUが国際的な合意や制度の真の守護者であることを示している。

EPAは日EUが保護主義や単独主義を拒否するというメッセージを世界に発信するものである。また、取り残されたかたちになる米国が交渉のテーブルに戻ってくるきっかけを与えることになるかもしれない。

■ リベラルな国際秩序の維持

日欧はWTO(世界貿易機関)の改革で協力する必要がある。米国がルールを無視し、WTOの価値・存在を疑問視するのであれば、どうして他国に義務を履行させることができようか。日欧がそれらの義務について説明責任を果たし、信頼に足る貿易パートナーとしての見本を示さなければならない。また、米国・中国という経済大国を改革に関与させる必要がある。

中国に対しては、結束してワンボイスで対応する必要がある。中国が自らを市場経済国であると主張するのであれば、その基準を満たしていることを自ら説明させることは日欧等の責任である。ルールに基づく国際システムを協力して維持していくことで、中国を含めた各国から敬意を集められる。世界貿易やグローバル・スタンダードの主導権を手放すリスクを冒してはならない。そのためには、封じ込め政策ではなく、創意工夫を凝らして中国をリベラルな国際秩序に取り込むような新しい方法を考え出す必要がある。

【国際経済本部】

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