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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年1月1日 No.3390 「日本企業の能力開発・キャリア施策」について聞く -雇用政策委員会人事・労務部会

経団連の雇用政策委員会人事・労務部会(國分裕之部会長)は11月28日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、労働政策研究・研修機構の藤本真主任研究員から「日本企業の能力開発・キャリア施策~現状・課題・展望」について説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ 日本企業におけるキャリア形成の状況

同機構が実施した「企業内の育成・能力開発、キャリア管理に関する調査」によると、現在、企業が力を入れている取り組みとしては「社員全体の能力の底上げ」が最も多く、これに「会社全体として共有したい価値観の明確化」が続いている。企業が組織全体を見渡した取り組みに注力していることがわかる。他方、今後、力を入れたい取り組みとしては、「女性管理職の育成・登用」と「役員・本部長等の経営層育成」が多くなっている。

社員の意向を反映した異動や育成を進める企業は、高度専門人材や経営層の育成に積極的であり、特に管理職と専門職のキャリアを区分するなど複線型のキャリア管理を行うことにより、社員の意向と会社経営の両立を図る工夫をしている。

海外マーケットを重視する企業は、海外で活躍できる人材や高度専門人材の育成に積極的であり、選抜的な教育訓練やキャリアの複線化にも力を入れる傾向がある。

■ 職場の管理職の役割と課題

企業は、職場の管理職に対して、管理職後継者や新人・若手の育成、能力開発方針の確立などさまざまな役割を期待している。

一方、管理職は、部下の育成・能力開発に必要な知識・ノウハウや時間が不足していると感じている。

知識・ノウハウの不足を訴える管理職は、部下に対する、仕事に関連した知識の提供や説明、キャリア形成に結びつく仕事の割り振りができていない傾向がある。さらに部下の育成・能力開発に関して、会社との連携ができていると感じることができていない。

他方、時間不足を訴える管理職は、部下に助言したり、相談に乗る傾向が強い。また、人事部門に対しては、労働時間の削減や管理職に対する支援を求める傾向が強い。

管理職の支援に向けて、働き方改革を推進するとともに、外部のキャリアコンサルタントを活用することが有効だろう。

■ 「キャリア自律」を進める企業

「キャリア自律」とは、めまぐるしく変化する環境のなかで、社員が自らのキャリア構築と継続的学習に取り組む、生涯にわたるコミットメントのことである。

企業は、グローバル化などの環境変化に対応しながら、顧客に高付加価値を提供していかなければならない。大きく変化する状況において、従業員の「キャリア自律」を促すことは、従業員と企業の成長を実現する有効な施策となる。

従来、日本企業はキャリアのビジョンやモデルを集団的に示してきた。今後は、個人の意向を踏まえ、集団のなかで個人をどう活かしていくのか考える必要がある。

多様な従業員の働き方に応じた能力開発を図っていくためには、個々の従業員にキャリアの可能性を示し、その実現に必要な能力開発手段(OJT、Off-JT、自己啓発の組み合わせ)を示す必要がある。そのうえで、能力開発手段の適切な実施時期を示すことが重要となる。さらに人事部門と職場の管理職、外部専門家が連携して情報収集とコンサルティングのための体制を整備することが求められよう。

【労働政策本部】

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