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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年1月17日 No.3392 第7回審議員会 -黒田日本銀行総裁講演/「わが国の経済・物価情勢と今後の展望」

経団連が12月26日に開催した第7回審議員会(1月10日号既報)で、黒田東彦日本銀行総裁が講演した。概要は次のとおり。

黒田総裁

■ わが国の経済・物価情勢

わが国の経済・物価は、この6年間で大きく改善した。今次景気回復局面は、戦後最長の73カ月に並ぶ息の長さに加え、業種や企業規模、地域を問わないバランスのよさが大きな特徴である。物価も、少なくとも「物価が持続的に下落する」という意味でのデフレではなくなっている。

先行きも、わが国の景気は緩やかな拡大を続けるとみられる。ただし、米中間の貿易摩擦をはじめとする保護主義的な動きなど、海外経済の動向を中心とする不確実性が増していることには留意が必要である。こうしたリスク要因に対する認識の変化が、株式市場の変動につながっている面もある。

■ 生産性向上に向けた取り組み

ショックに対する内外経済の頑健性は以前に比べて高まっている。その重要な要素の1つが、生産性向上に向けた取り組みである。労働需給がタイト化するなかで、企業は、より効率的な業務運営を目指し、省力化・合理化投資等を進めている。今後の成長の持続性を不安視する声もあるが、(1)海外経済の総じて着実な成長の持続(2)わが国経済の成長部門の多様化(3)わが国企業の収益力の改善――を踏まえると、過度に悲観すべきではないと考える。

今後も、企業が生産性向上に向けた前向きな取り組みを着実に継続することで、わが国経済の持続的成長とともに、不安心理の解消も期待できる。労働生産性のさらなる向上には、潜在需要の掘り起こしによる付加価値の増大が必要であり、そのためには、賃金上昇などを通じた、創意工夫に長けた優秀な人材確保も重要である。また、政府の成長戦略や構造改革は企業に大きなチャンスを提供するほか、日本銀行は、極めて緩和的な金融環境を通じて、企業の生産性向上に向けた努力をサポートしている。政府と日本銀行、産業界が一体となり、持続的な成長を実現したい。

■ 日本銀行の金融政策運営

日本銀行の金融政策運営の理念は「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」にあり、自らの責任において「物価安定の目標」の実現に全力を尽くす姿勢はこれまでも、今後も変わらない。6年前の「量的・質的金融緩和」導入時には、大胆な施策を実施することのベネフィットがコストを大きく上回ると判断して実行し、わが国経済・物価を大きく改善させる効果を挙げた。ただし、景気が拡大するなかでも「物価安定の目標」実現にはなお時間を要しているほか、さまざまな下振れリスクもみられている。こうした、やや複雑な局面では、政策のベネフィットとコストをバランスよく考慮しながら、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが重要である。

【総務本部】

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