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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年1月17日 No.3392 「CRDSが注目する異分野融合領域・横断テーマ2018」 -科学技術振興機構研究開発戦略センター(JST/CRDS)から聞く/未来産業・技術委員会企画部会

経団連は12月21日、東京・大手町の経団連会館で未来産業・技術委員会企画部会(江村克己部会長)を開催した。科学技術振興機構研究開発戦略センター(JST/CRDS)の永野智己総括ユニットリーダー、福島俊一システム・情報科学技術ユニットフェロー、荒岡礼ナノテクノロジー・材料ユニットフェローから、同センターが8月に公表した「Beyond Disciplines―JST/CRDSが注目する異分野融合領域・横断テーマ(2018)」(以下、CRDSレポート)の内容を中心に説明を聞くとともに意見交換を行った。

冒頭、永野総括ユニットリーダーは「多様化・複雑化する現代の社会課題を解決するためには、歴史的な専門・細分化された単一分野では対応できず、さまざまな分野の融合が求められる。何でも融合すればいいというわけではないが、CRDSレポートでは、困難を伴っても推進・実行すべきテーマを融合の視点から選んだ」と説明した。また、「研究開発を評価する側が伝統的・保守的であることが、分野間の融合を阻んでいる。バウンダリー・スパナーと呼ばれる分野間の境界を“伸ばし紡ぐ”人材が求められており、彼ら彼女らを評価していく仕組みへと変えていかなければならない」と強調。加えて、各国の動向について「欧米や中国等では融合や学際をハイライトした新たなプログラムを立ち上げている。一方で、米国の国立科学財団等では、融合分野への投資は予算全体の数パーセントにすぎず、これまでの蓄積に基づく競争力を有する分野への投資が現在もメーンであり続け、両面でポートフォリオを組む戦略をとっている」と紹介した。

続く福島フェローは、さまざまな分野におけるAIの社会実装と、関連する技術的課題・政策的課題について論じた。福島フェローは「AIを活用したシステムの品質保証・動作保証がないまま、社会実装が急激に進むと、交通や医療などの人命にかかわる産業を中心に、問題や事故の発生が大きな社会問題につながりかねない」と警鐘を鳴らした。求められる対応として、「新たに『AIソフトウェア工学』を確立し、AI品質を日本の競争力とするため、産学官が連携して総合的に取り組む必要がある」と主張した。

荒岡フェローは、生体と材料の間にはたらく相互作用を能動的に制御して機能を発揮するバイオアダプティブ材料について説明した。荒岡フェローは「バイオアダプティブ材料が実現すれば、移植不要の組織・臓器再生、完全埋め込み人工臓器・デバイスのほか、がん等の超早期診断・治療等の実現につながる」と将来ビジョンを語った。また、その実現に向けて「研究・開発を進めるうえで、医・理・工・生物学等の多様な研究者が一緒になって課題を設定することが重要」と述べた。

【産業技術本部】

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