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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年1月24日 No.3393 提言「新たな時代の通商政策の実現を求める―世界貿易機関(WTO)の改革を中心に」を公表

経団連は1月22日、提言「新たな時代の通商政策の実現を求める―世界貿易機関(WTO)の改革を中心に」を公表した。今年、日本がG20議長国を務め、経団連では6月のG20サミットに先立つ3月にB20サミットを主催する。同提言は、各国経済界等との議論に先立ち、WTO改革を中心に通商政策全般に関する経団連の考え方を提示するものである。

■ 現行のWTOのもとで顕在化する通商摩擦

164カ国を擁するWTOは世界の通商秩序の基盤である。しかしながら、2001年に開始されたドーハ・ラウンドが膠着するなか、デジタル取引の拡大等の経済実態とWTO設立当初のルールとの乖離が拡大している。また、米中の通商摩擦の背景にある市場歪曲的措置等の規律は不十分である。さらに、米国が制度の現状に異を唱える紛争解決手続の機能不全が顕在化している。

■ WTOの機能回復に向けた制度改革

こうした現状に鑑み、各国が直面する課題に応える国際機関として求心力を回復すべく、以下のWTO改革を求めている。

第1に、自由化・ルール策定機能の再活性化が必要である。とりわけ電子商取引については、現在約70の有志国で議論が行われており、多くの国の参画を得た高いレベルの規律策定に向けて速やかな交渉開始を求めている。市場歪曲的な産業補助金や国有企業の規律の強化も喫緊の課題である。

第2に、履行監視機能の強化については、通報義務の強化(補助金等の通報の遅滞へのペナルティー賦課等)や、通常委員会の積極的活用・活動の見直しを求めている。

第3に、紛争解決機能について、米国は、上級委員会(準司法手続の上訴審)がWTO協定上の権限を逸脱しているとして、上級委員の任命を拒否している。この点を含め、WTOの上級委員会の一刻も早い機能回復に向けた具体的な議論を推進すべく、関係国の真摯な取り組みを求めている。

■ WTOを補完する経済連携等の推進

経済連携協定(EPA)等を通じた自由化・ルール拡大への継続的な取り組みにも言及している。TPP11(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)、日EU EPAの成果を梃子に、ルールに基づく自由で開かれた国際経済秩序の重要性を訴えていくべきだとしている。

■ 日本の役割・経済界の役割

貿易・投資は経済成長の源泉であり、各国国民が広くその恩恵を享受するには、各国がWTOの多角的貿易体制のもと、保護主義的・貿易制限的な措置、一方的措置を抑止していくことが不可欠である。G20議長国であるわが国が以上のようなWTO改革への主導力を発揮することを期待する。あわせて、わが国経済界は、日本政府をはじめ各国の取り組みを積極的に推進すべく、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献等、多角的国際経済秩序の意義についての発信に努めるとしている。

【国際経済本部】

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