経団連の中西宏明会長は1月28日、東京・大手町の経団連会館で記者会見を行った。
中西会長は春季労使交渉に関して、Society 5.0の背景にあるデジタル・トランスフォーメーションは働き方改革にも直結していると指摘。産業構造が大きく変化するなか、「仕事が変わる」という現実を労使ともに直視しなければならないという、大きな転換点にあるとの認識を示した。働き方改革では、生産性向上の面ばかり注目されるが、デジタル化のなかでの働き方や仕事の変化を意識したうえ、働き方改革が持つ意味を労使で議論することが必要と強調した。
経労委報告ではベアを選択肢の1つとして示しており、成果を上げた従業員に賃金で報いるのは当然との考え方を経営者は共有していると指摘。米中貿易摩擦の影響など先行きの不透明感は経営者の心理面でのプレッシャーになるが、労使交渉に直接影響するものではないとの見方を示した。また、経営環境は企業・産業によって大きく異なり、ベアへの対応も各社の状況によるとしたうえで、働く人のやる気・モチベーションをどうすれば高められるかが大きな経営課題だと述べた。
エネルギー問題をめぐっては、パリ協定に基づく温室効果ガス削減目標をどう達成していくかについて、G20議長国である日本のスタンス・対応が国際社会で注目されているが、具体的なマイルストーンを示せていないと指摘。エネルギーのポートフォリオだけでなく、将来的に温暖化にどう取り組むのかを内外に示していく必要があるとの認識を示した。日本政府として、G20やエネルギー大臣会合の場でどのようなメッセージを出すのかが大きな課題と述べた。
再生可能エネルギーの拡大に向けては、グリッドに起因する制約もあり電力投資が停滞しており、エネルギーの分散化に対応した料金体系の再構築など、法改正を含めた環境整備を検討する必要があると指摘。日本においては、太陽光、風力ともに適地が乏しく、大型化も難しい現状にも言及した。そのうえで、経済界と行政、政治がこれらの課題を受け止め、議論を展開していくことが国民の理解を得るための第一歩と指摘。エネルギー全体にかかる国民的な議論が必要との考えから、経団連は提言を取りまとめていると述べた。
2月1日に発効する日EU EPAについては、日本とEUを合わせた経済規模はかなり大きく、保護主義が台頭するなか、日欧が自由貿易を堅持していくという強いメッセージになると述べた。
【広報本部】