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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年2月14日 No.3396 久保21世紀政策研究所研究主幹、グリーンCSIS上級副所長兼日本部長との懇談会を開催 -ワシントン・リポート<54>

経団連米国事務所は1月30日、21世紀政策研究所米国プロジェクトの久保文明研究主幹(東京大学大学院法学政治学研究科教授)、米シンクタンクの戦略国際問題研究所 (Center for Strategic and International Studies, CSIS) のマイケル・グリーン上級副所長兼日本部長から、トランプ政権の外交政策や日米関係の現状について説明を聞くとともに意見交換を行った。概要は次のとおり。

■ 久保21世紀政策研究所研究主幹

トランプ政権下で米国の対中政策は潮目が変わった。貿易交渉はじめ中国の通信機器大手ファーウェイの起訴や、台湾、ウイグル、チベットなどの問題への関与強化、孔子学院の大学からの放逐など政府を挙げた厳しいアプローチに舵を切っている。オバマ政権まで、米国の対中政策は比較的中国に寄り添うかたちをとることが多かったため、この急激な変化に中国は意表を突かれたのではないか。

他方、トランプ政権の対中政策は大統領自身の政策理念に一貫性がなく、政策の司令塔や政策目標が不明という課題もある。東西冷戦に勝利すべくソ連に対し徹底的な締めつけを行ったレーガン政権の対ソ政策に比べると、中国を徹底的に取り締まるという姿勢は見受けられない。翻って、安倍政権は、プロジェクトの透明性や開放性等を条件に中国の一帯一路政策に限定的協力をする姿勢を示しており日中関係は改善傾向にあるが、日米同盟を盤石にしたうえで中国との関係を良好に保つことが重要である。

■ グリーンCSIS上級副所長兼日本部長

中国・北朝鮮の脅威やEUの政治的混乱、日本経済の好調と対米投資の増大等を背景に、日米関係はかつてなく強固な状態にある。数年前、ワシントンDCのシンクタンクのなかには米中関係を重視し安倍政権を批判する声もあったが、今は皆無である。日米貿易交渉は、交渉分野について両国政府の意見が平行線をたどっている。米国はとりわけ、農産品、自動車、為替を重視しているが、日本政府と折り合うのは困難だと予想される。他方、安倍首相がダボス会議で提唱したデータ流通の国際ルール・メーキングは両国が積極的に協力可能な分野である。5GやAIなどデジタル革命が加速するなかにあってインターネットガバナンスは重要な課題であり、TPPから脱退した米国にとってもTPPで規定されている内容よりも進化したルールの策定は不可欠である。

米朝首脳会談は向こう数週間以内に開催される見込みだが、その行方には2つのシナリオが考えられる。1つは、前回のシンガポールでの会談と同様に成果なく終了するシナリオである。もう1つは、Catastrophic Success (交渉の成果が深刻な危機を生む)の訪れ、すなわち、北朝鮮の非核化のみならず朝鮮半島を米国の核の傘から外すべく、在韓米軍が撤退するシナリオであり、最近のシリアからの米軍撤退などを踏まえると、その可能性は排除できない。

【米国事務所】

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