経団連は1月17日、都内で経済法規委員会競争法部会(川田順一部会長)を開催し、公正取引委員会事務総局の菅久修一経済取引局長、向井康二官房参事官、松本博明経済取引局総務課企画室長から、独占禁止法の課徴金制度等の見直し方針について説明を聞き意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 課徴金制度の見直し
一昨年4月の「独占禁止法研究会報告書」を踏まえ、課徴金制度を見直す。今年の通常国会への独占禁止法改正法案の提出を目指し、調整を進めている。
(1) 適切な課徴金を賦課するための見直し
現行の課徴金制度は、違反行為の対象商品・役務の売上額を算定基礎とするが、売上額がなくとも談合金などの不当利得が生じている場合があり、これを新たに算定基礎に追加する。また、長期間にわたる違反行為に対処するため、最長で3年とする現行の算定期間を、調査開始日から遡って10年に改める。あわせて、違反行為が終了してから課徴金を賦課できなくなるまでの期間(除斥期間)を現行の5年から7年に延長する。算定率については、中小企業算定率の適用対象の適正化、業種別算定率の廃止等を予定している。
(2) 調査協力インセンティブを高める仕組みの導入
現行の課徴金減免制度は、事業者の申請順位に応じて一律の減免率を適用するもので、適用事業者数は最大5社に限定。事業者が公正取引委員会の調査に協力するインセンティブを高める観点から、申請順位に応じた減免率に、事業者の実態解明への協力度合いに応じた減算率を付加する仕組みに改め、申請事業者数の上限は撤廃する。透明性・予見可能性等の観点から、証拠の評価方法について事前にガイドラインを整備し、協力の内容と減算率の付加について事業者と公正取引委員会で協議するプロセスを設ける。事業者と公正取引委員会が、対立した関係ではなく、同じ方向を向いて協力して実態解明できる仕組みとしたい。
■ 弁護士・依頼者間秘匿特権への対応
以上のように課徴金減免制度を見直した場合、事業者が調査協力を効果的に行うために外部の弁護士に相談するニーズがさらに高まると考えられる。そこで、新たな課徴金減免制度をより機能させる観点から、いわゆる弁護士・依頼者間秘匿特権に対応するための制度を、公正取引委員会規則、指針により整備する。
制度の対象となる手続きは不当な取引制限(カルテル・談合等)にかかる行政調査手続きである。法的意見について事業者と弁護士との間で秘密に行われた通信の内容を記載した文書で、一定の要件を満たすものは、審査官がアクセスすることなく、速やかに事業者に還付する。いわゆる一次資料等は対象外だが、事実関係であっても、弁護士等の評価・整理が介在していれば、それが唯一の証拠であっても、制度の対象となる。濫用防止の観点から、制度の対象となるか否かについて事件調査に関与しない職員による判別手続きを行うが、これに対する不服は裁判所による司法審査の対象となり得る。引き続き、電子メールの取り扱いなど、検討を進める。
【経済基盤本部】