経団連(中西宏明会長)は3月14、15の両日、東京・大手町の経団連会館でB20東京サミットを開催した(前号既報)。15日には、Society 5.0 for SDGsを全体テーマとして、B20東京サミット共同提言で取り上げたさまざまな課題に呼応するかたちでパネル・ディスカッションを実施した。
開会あいさつで中西会長は、ルールに基づく自由、公正で開かれた国際経済秩序を維持・強化していくことの重要性を強調したうえで、B20として、デジタル革新を通じて社会課題を解決するSociety 5.0 for SDGsの実現に向けて取り組むよう呼びかけた。各パネルの概要は次のとおり。
■ 第1パネル「世界経済=グローバル・ガバナンスの確立に向けた国際協調」
パネリストの多くが、経済の下方リスクとして現下の通商摩擦に言及した。米国国際ビジネス評議会(USCIB)のピーター・ロビンソン理事長が、米国経済界としては国際協調を支援する旨を表明する一方、他のパネリストからは、長期的な課題として気候変動やデジタル革新等が指摘された。こうしたなか、経団連の國部毅副会長は、デジタル革新を通じて金融アクセスを高めることによって、SDGs(持続可能な開発目標)が掲げる貧困撲滅や成長の拡大、イノベーションの促進に貢献できると主張した。
■ 第2パネル「貿易・投資=強靱なルールによって公平な競争環境と連結性の確保」
世界貿易機関(WTO)の易小準事務局次長は「貿易・投資の停滞が経済成長の足かせとなり保護主義を招くという悪循環に陥っている」現状を指摘し、1990年代のように「貿易・投資の自由化が経済成長につながり、さらなる自由化を促すという好循環を実現することが重要」と主張した。一方、経団連の飯島彰己副会長は、二国間の貿易収支のみに着目すれば、より構造的な問題を見逃すと指摘したうえで、WTOによる多角的貿易体制の意義を説いた。
■ 第3パネル「デジタル革新=Society 5.0の実現を通じた社会課題の解決」
世界経済フォーラム(WEF)のムラット・ソンメズ第四次産業革命センター所長は、デジタル革新に対応した次世代データガバナンスを構築すべく、スマートシティで先行的にSociety 5.0を実現するよう提案した。これに対し経団連の篠原弘道審議員会副議長は、データ流通や個人情報保護に関する規定・規制の調和や、サイバーセキュリティの確保の重要性を指摘した。
■ 第4パネル「誰も取り残さない解決策=SDGsの達成に向けた地球規模課題」
第5パネル「企業による積極的な取り組み=Society 5.0を通じたSDGsの達成」
SDGsの解決に向けた具体的な方策や企業の取り組みのあり方について熱のこもった議論が行われた。ロシア産業家企業家連盟のアレクサンダー・ショーヒン会長は、B20東京サミット共同提言とともに経団連が取りまとめたSociety 5.0 for SDGsの事例集を高く評価しつつ、同国でも持続可能な開発に関する各企業のベスト・プラクティスを収集している現状を説明した。また経団連の片野坂真哉副会長は、遠隔地に置かれたロボットを操作するAVATARを活用して、障がい者等が分身ロボットを動かすカフェを運営したプロジェクトを紹介。宇宙空間でのロボット操作や災害現場における救助活動等にも応用可能であるとして、将来に向けたポテンシャルを指摘した。
◇◇◇
こうした一連の議論の後にあいさつしたユースフ・アブドゥッラー・アルベンヤーン次期B20議長は、Society 5.0 for SDGsに共鳴しつつ、来年のB20サウジアラビアのプロセスにおいても、包摂的なアプローチを通じて地球規模課題に取り組んでいくとの決意を表明した。
【国際経済本部】