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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年4月11日 No.3404 提言「日本を支える電力システムを再構築する」を公表 -中西会長が記者会見「電力の現状・投資停滞に危機感。広く共有し国民的議論で解を求めたい」

記者会見する中西会長

経団連(中西宏明会長)は4月8日、提言「日本を支える電力システムを再構築する―Society 5.0実現に向けた電力政策」を取りまとめ、中西会長が東京・大手町の経団連会館で記者会見を行った。

会見で中西会長は、かねてより日本の電力に強い危機感を持っており、このままでは国民生活や事業活動に甚大な影響を及ぼしかねないと危惧していると説明。この危機感を会長・副会長はじめ首脳レベルで共有して取りまとめた経済界からの問題提起が今回の提言だと紹介した。電力をめぐる危機感が政府・経済界・学術界はじめ、広く国民にも共有され、電力の全体像について国民的議論が展開していくことへの期待を強く訴えた。そのうえで、電力投資に民間資金が回り、技術開発が進み、新たな産業が興って経済成長へとつながる仕組みを構築していく必要性に言及した。

■ 「4つの危機」がもたらす電力投資の停滞

現在、日本の電力は4つの危機に直面している。国際的に地球温暖化問題への関心が高まるなか、東日本大震災以降、(1)火力発電依存度は8割を超え、その打開策となる(2)再生可能エネルギー(再エネ)の拡大も、(3)安全性が確認された原子力発電所の再稼働も、困難な状況。結果として、電力自由化が料金抑制を一つの目的として進められているにも関わらず(4)国際的に遜色ない電気料金水準も実現できていない。一方で、電気事業者は投資回収の見通しを立てにくくなり、電力インフラへの投資を抑制している。

こうした危機を放置すれば、化石燃料依存から脱却できないばかりか、電力供給の質の低下や電気料金の高騰につながりかねず、地球温暖化対策や産業競争力強化に逆行する。Society 5.0実現の重要な基盤でもある電力に対して投資を活性化すべく、環境整備を進める必要がある。

■ 改革の方向性

まず、投資の回収可能性が見通せるよう、将来像を明確化する必要がある。政府には、次期エネルギー基本計画の策定にあたり、2030年以降の電力システムの将来像を、複線シナリオとして示すことを求める。

発電分野では、発電された電気そのもの(電力量)以外にも、発電できる能力(容量)、素早い出力調整機能(調整力)、環境価値といった価値を正当に評価し、発電投資を促進する必要がある。政府はこれらの価値を対応する市場でそれぞれ取引することを想定しているが、制度全体が健全に機能することをモデル分析等を用いつつ検証することも重要である。

また、電気料金の上昇を抑えつつ再エネを最大限導入できるよう、支援制度を抜本的に見直す必要がある。原子力発電については、地球温暖化対策の観点からも、安全性確保と国民理解を大前提に、既設発電所の再稼働やリプレース・新増設を真剣に推進することが不可欠である。

送配電分野では、老朽化する送配電網を更新・次世代化し、大規模洋上風力発電や屋根置き太陽光、電動車などの導入に対応していく必要がある。送配電費用の回収制度である託送料金制度に次世代化投資へのインセンティブを組み込み、必要な投資を円滑に行える制度へと改めるべきである。また、再エネをはじめ分散型電源の拡大によって送配電網を流れる電力量が減少していくなかでも投資を確保する観点から、料金回収における基本料金比率を引き上げる改革も必要である。

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■ 今後の対応

提言の公表を契機に、日本の電力が置かれた危機的状況が広く共有され、日本を支える電力システムの維持・高度化につながる多面的な政策の検討が進むことを期待する。経団連として、関係方面への働きかけを強化していく。

【環境エネルギー本部】

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