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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年4月18日 No.3405 提言「Society 5.0の実現に向けた『戦略』と『創発』への転換」を公表 -政府研究開発投資の量の確保と質の向上を求める

経団連(中西宏明会長)は4月16日、提言「Society 5.0の実現に向けた『戦略』と『創発』への転換~政府研究開発投資に関する提言」を取りまとめ公表した。

近年、低下が指摘されるわが国研究力の再生を図るために、経団連はかねて政府研究開発投資の対GDP比1%確保を求めてきた。また、昨年11月の提言「Society 5.0 ―ともに創造する未来―」のなかで、研究開発の今後の方向性を「選択と集中」から「戦略と創発」へ転換すべきだと主張した。今回の提言はそれらの議論を深化させつつ、今後議論が本格化する第6期科学技術基本計画を視野に入れて提案を行った。

■ 現状と課題

わが国の研究力は低下傾向にある。要因の一つは公的財源の不足にあると考えており、その増加率は、中国はもとより米国やドイツ等の先進諸国と比較しても低調である。産学連携の規模は徐々に拡大しているが、政府目標である3倍増にはさらなる加速が必要である。また、研究人材の流動性も低い。

■ 政府研究開発投資の目指すべき方向性

量の確保、つまり対GDP比1%目標の確実な実現が、最重要課題と述べている。さらに、質の向上に向け、これまでの「選択と集中」を改め、戦略的研究という、Society 5.0の実現を目指す研究と、創発的研究という、破壊的イノベーションをもたらすシーズの創出を目指す研究、この2本柱へと転換すべきだと提言している。戦略的研究と創発的研究は相互に関連するもので、それらを有機的につなぐエコシステムの構築も重要である(図表参照)。

「戦略」と「創発」のイメージ

■ 戦略的研究

戦略的研究を進めるうえで重要なポイントとして、(1)特定の技術にこだわらない、Society 5.0のあるべき姿をブレークダウンしたテーマ設定(ヘルスケアや防災等の分野について政府の積極的な支援に期待)(2)技術の社会実装に向けた、社会受容性の向上や法制度の整備の推進(3)イノベーションエコシステムの構築のため、大学と企業の組織対組織の大型共同研究の推進、政府の研究開発プロジェクトへの海外企業や大学、ベンチャー企業等の参画の推進(4)Society 5.0の世界展開に向けたルール形成――の4点を提言している。

■ 創発的研究

創発的研究に関しては、単なるばらまきではなく、有望なシーズを育てるため、(1)研究者や学問領域の多様性の向上(2)多様な学問領域の融合(3)失敗を恐れない野心的挑戦への評価――の3点を重視して投資すべきだと主張した。

運営費交付金や科研費(科学研究費補助金)については、多様性やエコシステム構築、分野間の融合を評価した配分を行うよう求めている。また、研究者がクラウドファンディングで市民から資金を募り、政府がそれと同額を補助する新たな仕組みや、研究機関の国際拠点化の推進も提言した。創発的研究で生み出されたシーズの活用には、企業の「目利き力」の向上や大学の産学連携体制の強化を通じた、産学連携の促進が重要であることも強調している。

提言では最後に、Society 5.0のあるべき姿を社会全体で議論する枠組みの必要性を主張している。あわせて、研究開発とそれ以外のさまざまな政策を一体的に立案、運用できるよう、政府の組織構造の見直しの必要性も提起した。

【産業技術本部】

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