米国道路交通建設者協会(The American Road & Transportation Builders Association、ARTBA)が4月に発表した報告書によると、全米で61万6087ある橋梁のうち、4万7052(約7.6%)については構造的な欠陥状態にあると分類され、早急な補修が必要とされている。ARTBAは1902年に設立され、官民合わせて8000以上の組織が加盟している。安全かつ効率的な移動需要を満たすために、積極的な交通インフラ投資を提唱している。
■ 補修ペースの鈍化
連邦政府のデータに基づいて作成された同報告書によると、2018年は前年までに比べて補修ペースが遅くなっており、直近5年間で、全体で補修が必要とされる割合の1%しか補修が完了していない(図表参照)。このままのペースで進むと、全作業が終了するのに80年以上かかる計算となる。
■ 高齢化
補修が必要となる構造的な欠陥状態にある主な原因の一つとして、該当する橋の多くが建設されてから長期間たっており、その平均は62年である。一方で、補修が必要ない橋については建設からの期間が平均40年である。
構造的な欠陥状態にある橋のなかには、ニューヨーク州のブルックリン橋、ワシントンDCとバージニア州を結ぶアーリントン・メモリアル橋、サンフランシスコ湾に面するカリフォルニア州で最も長いサンマテオ・ヘイワード橋なども含まれている。そのような橋をすべてつなげると1100マイル(約1770キロメートル)にも及び、シカゴからヒューストンまでの距離に相当する。
■ 費用不足
修繕が進まない要因として、費用不足が指摘されている。構造的欠陥までには至らないものの、何らかの修復が必要となるものまで含めると全体で23万4932(約38%)に上り、その補修費用として1710億ドル(約19兆円)必要になると見積もられている。ガソリンなどの燃料にかかる税金を主な交通インフラ財源とするなか、収支バランスで赤字が拡大する傾向にあるため、先行きは楽観できない。
■ 州別データ
州別のデータとして、構造的欠陥状態にある橋の数や割合も公表されている。多い順に絶対数と割合はそれぞれ、アイオワ州(4675)、ペンシルベニア州(3770)、オクラホマ州(2540)と、ロードアイランド州(23%)、ウェストバージニア州(19.8%)、アイオワ州(19.3%)である。
報告書によると、これらの橋が差し迫って危険な状態にあるということではないものの注意が必要であるとされている。乗用車、トラック、スクールバスなどを含めて、当該橋梁の1日の通行量をすべて足し合わせると1億7800万回にも及ぶため、一部には重量制限などを設けて負荷がかかり過ぎないように対処している橋もある。
【米国事務所】