経団連は4月18日、東京・大手町の経団連会館で都市・住宅政策委員会企画部会(安達博治部会長)・PPP推進部会(竹内俊一部会長)合同部会を開催。わが国の主要企業約40社で構成される産業競争力懇談会(COCN)において、「デジタルスマートシティの構築」プロジェクトのサブリーダーを務める日本電気の望月康則NECフェローから、COCNが今年2月に公表した提言「デジタルスマートシティの構築」について説明を聞くとともに懇談した。説明の概要は次のとおり。
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スマートシティは多様な経済活動と市民生活とが交差するデジタル変革の主戦場である。欧米や中国ではトップダウンで毎年数百億~数千億円の規模の投資と制度改革を推進している。わが国でもSociety 5.0構想のもと各分野でデジタル技術の社会実装が推進されているが、スマートシティ分野ではデジタル変革の規模とスピードで海外との差が拡大している。喫緊に政策投資と制度改革を統合的に集中して進め、産・学・官・公・市民が一致団結して取り組む必要がある。
提言では、「大都市における街区・地区」「大都市周辺・中核都市の市域全体」「地方都市の中心市街地」の3類型の都市・地区において、政策資源をモデル都市に集中投入し、「Society 5.0」の実証を行うことを提案している。また、こうしたモデル都市実証に加えて、全国にスマート化を定着させるために、制度・規制改革や中核推進組織のあり方など、さまざまな課題に継続的にチャレンジしていく必要がある。特に、ステークホルダーの認識共有やデータ運用基盤の相互運用性担保、さらにはベストプラクティスの展開などの都市間連携に向けては、共通のアーキテクチャーモデル(スマートシティの設計図)の活用が重要である。
当社でも、欧州委員会の官民連携プログラムで開発・実証されたIoTプラットフォーム「FIWARE」を活用しながら、地域の皆さまが、分野や組織を横断した新たなサービスを創出していくための基盤を提供している。
例えば、香川県高松市では、地域データを収集・分析する共通プラットフォームを構築するとともに、産学官民の地域協議会を設置しデータの横断的利活用を推進している。また、安心な住環境の整備を進めている兵庫県加古川市では、すでに市内1500カ所に設置されたカメラ兼検知器を活用した見守りサービスが提供されているが、現在、そのシステムが保有するデータの段階的統合および利活用を始めている。
大都市である東京圏のスマート化に関しては、国際競争力強化を主目標に置いており、行政構造も類似しているロンドンが参考になるだろう。その際、デジタル時代を念頭に置いて「保有する強み」と「課題認識」を整理することが重要となる。
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講演後に行われた懇談では、委員からの、スマートシティにおいて、個人データも含めデータ流通を促進するにはどのような取り組みが必要かとの質問に対し望月氏は、安心してデータを出してもらうためのプライバシー保護技術の確立はもちろん重要だが、加えてどのようなデータでどのような価値を創出できるかという“ご利益”の実証と、多様なステークホルダーが納得して共有できるガバナンスポリシーも重要であると答えた。
【産業政策本部】