経団連は5月13日、東京・大手町の経団連会館で金融・資本市場委員会(國部毅委員長、林田英治委員長、日比野隆司委員長)を開催し、金融庁企画市場局の古澤知之審議官から「企業情報の開示の充実に向けた取り組み」について説明を聞くとともに意見交換を行った。3委員長はじめ、約140名が出席した。
同テーマに関する説明は、3月27日の同委員会資本市場部会(松山彰宏部会長)で有価証券報告書(有報)作成担当者向けに開催しており、今回は企業経営者に対する周知を目的としたもの。概要は次のとおり。
■ 有価証券報告書の開示内容の拡充
1月に企業内容等の開示に関する内閣府令が改正され、有報の開示内容が拡充される。2019年3月期の有報からは、役員報酬や政策保有株式等のガバナンス情報の開示の拡充が、20年3月期の有報からは、記述情報(非財務情報)等の開示の拡充が求められる。
今般の改正の目的は、企業情報の開示の拡充を通じて、投資家との建設的な対話の促進を図り、中長期的な企業価値の向上につなげていくことにある。とりわけ記述情報の開示拡充を通じて、「経営者目線での情報開示」を充実させることで、有報を建設的対話の土台とすることを目指している。
■ 記述情報(非財務情報)の充実
「経営者目線での情報開示」が求められるのは、「経営戦略・ビジネスモデル」「リスク情報」「MD&A(経営者による財政状態、経営成績およびキャッシュフローの状況の分析)」である。これらの項目について、CEO(最高経営責任者)やCFO(最高財務責任者)自らの目線での開示が求められる。
例えば、リスク情報については、「事業に及ぼす影響の大きさ」や「顕在化の蓋然性・タイミング」を、経営層がどのように評価し、リスク情報の重要性の判断を下しているかの説明が求められる。
MD&Aでは、成長投資・手許資金・株主還元のあり方や資本コストについて、経営者の考え方を開示することが期待される。セグメント情報についても、経営者目線を十分に踏まえた深度ある開示が求められており、例えば、経営戦略の説明に適した単位(事業セグメントに加え、地域別のセグメントを示す等)での開示が考えられる。
これらの開示にあたっては、わかりやすさの観点から、図表、グラフ、写真等の補足的なツールを用いたり、前年からの変化を明示するなどの創意工夫も期待される。
金融庁では、参考となるような企業情報の開示を好事例集として公表している。好事例集の随時更新も予定しており、有報の作成にあたり、ぜひ参考にしてほしい。
<意見交換>
意見交換では、出席者から「資本市場部会では、有報は法定開示であり、虚偽記載とみなされる懸念があるとの意見が寄せられた」「企業会計審議会で議論が始まった記述情報への監査人の対応は、企業の情報開示に対する前向きな姿勢にマイナスの影響を及ぼしかねない」との発言があった。
古澤氏からは「ご指摘の点についてはパブリックコメントに対する金融庁の考え方で『有報提出日現在において、一般に合理的と考えられる範囲で具体的な説明がなされていた場合、提出後に事情が変化したことをもって、虚偽記載の責任を問われるものではないと考えられる』旨示している」との回答があった。
【経済基盤本部】