第108回ILO総会が6月10日から21日まで、スイス・ジュネーブのILO本部・国連欧州本部で開催された。日本からは、髙階恵美子厚生労働副大臣、逢見直人連合会長代行、得丸洋経団連雇用政策委員会国際労働部会長がそれぞれ政労使の代表として参加した。
■ 総会議題
今総会では、職場における暴力とハラスメント防止に関する条約ならびに勧告の策定が中心的な議題であった。昨年の総会で1回目の審議が行われ、今総会における2回目の審議において、賛成多数により勧告に補完された条約が採択された。
(1) 定義
「仕事の世界における暴力及びハラスメント」は、単発か繰り返されるかにかかわらず、身体的、精神的、性的または経済的な損害を目的とした、またはこれらの損害を引き起こす、もしくは引き起こす可能性がある一定の範囲の許容できない行為および慣行またはその脅威をいい、ジェンダーに基づく暴力とハラスメントを含む。
(2) 対象範囲
対象となるのは国内法令および国内慣行により定義される雇用者、契約状況にかかわらず就労している人、インターンや見習いを含む訓練中の人、雇用契約が終了している労働者、ボランティア、仕事の応募者、個人としての使用者等。公式・非公式経済、都市部・農村部にかかわらず、すべてのセクターに適用される。
また、職場のみならず、出張中や仕事に関連する社会活動中、使用者が提供する住居等や、仕事の過程で、またはそれに関連してもしくは起因して生じる暴力およびハラスメントも対象となる。
(3) 基本原則
加盟国は、代表的な使用者団体および労働者団体と協議のうえ、仕事の世界における暴力およびハラスメントの防止および撤廃のための包括的で統合され、かつジェンダーに配慮したアプローチを各国の法律および状況に従い採択する。
(4) (基本原則に則った)保護及び防止措置
加盟国は、ジェンダーに基づく暴力およびハラスメントを含む、仕事における暴力およびハラスメントを定義し、禁止するための法令を採択する。各加盟国は、仕事の世界における暴力やハラスメント(ジェンダーに基づくものも含む)を防止するため、使用者に対してその管理可能な程度に応じた適切な措置を講じることを求める法令を採択する。
(5) 救済・執行
加盟国は、暴力やハラスメントが生じた場合、適切かつ効果的な救済や紛争解決の仕組みへの容易なアクセスの確保、関係する個人のプライバシー保護、仕事の世界へのドメスティック・バイオレンスの影響の軽減等を行うための適当な措置を取らなければならない。
■ 代表演説
6月17日、得丸部会長が日本の使用者の立場から代表演説を行った。概要は次のとおり。
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ILOが1919年の設立以来、多くの苦難を乗り越え、今年100周年を迎えたことをお祝い申し上げる。イノベーションが実現してこそ、雇用創出が行われ、ディーセント・ワークを実現させることができる。「職場における暴力とハラスメント防止」に関する条約・勧告について、柔軟で国内法との整合性が確保できる内容とすることが重要である。
【労働法制本部】