Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年7月4日 No.3414  総務省から統計改革の取り組み状況等について聞く -経済財政委員会統計部会

経団連は6月11日、東京・大手町の経団連会館で経済財政委員会統計部会(野呂順一部会長)を開催し、総務省からGDP統計をはじめとする公的統計の精度向上を目指した統計改革の取り組み状況とともに、毎月勤労統計などの不適切事案を受けた政府統計の点検状況と再発防止策等について説明を聞いた。経団連からは、統計改革への協力という観点から、今後とも前広な情報提供と意見交換の場を設けるよう要望した。総務省の説明の概要は次のとおり。

■ SUT体系への移行に向けた対応(高田聖治統計審査官)

現在、政府ではGDP統計の改善の一環として、複雑化する産業別の付加価値を的確に把握するため、SUT(Supply and Use Tables、供給・使用表)体系への移行を進めている。具体的には、GDP統計の推計方法を、基礎統計から産業連関表を経由してSUTを推計する現行体系から、基礎統計から直接SUTを推計する体系に変更していく。各企業には、基礎調査の段階で、売上高の内訳を把握するための経済センサスと、費用構造を知るための投入調査に協力いただくこととなる。特に投入調査の費用項目は、統計精度の確保と報告者負担の軽減の観点を踏まえ、従来よりも大くくりにしたものに見直す。今後のプロセスとしては、GDP統計の基準改定に合わせて、まず2020年表では、統計に課題があるサービス分野から見直しに着手することとしている。

■ 経済構造実態調査の実施(小松聖経済統計課長)

経済統計にかかる新たなニーズとして、経済センサス(活動調査・5年ごと)の中間年における産業横断的な統計の整備を求める声が強まっている。これに応えるために、今般、商業統計調査等の既存の3調査を統合・再編し、新たに経済構造実態調査を創設した。同調査は、(1)産業横断的な年次構造統計の整備(2)国民経済計算の精度向上のための適切なデータ提供(3)報告者の負担軽減――を最大限考慮している。

あわせて、新たな調査手法として、調査対象を売上高シェア等に応じて選定するとともに、企業規模や業種によって調査項目をカスタマイズすることとしたが、上場企業や売上高の大きい企業にはより詳細な調査となるため、当該企業を対象に専任スタッフの配置と専用システムによるサポート体制を導入した。経済界においては、こうした取り組みについて理解いただくとともに、調査への協力をお願いしたい。

■ 統計点検と再発防止策(阿南哲也統計委員会担当室次長)

政府では、毎月勤労統計調査における不適切事案を受け、再発防止と公的統計の品質向上等を目的に、基幹統計と一般統計を対象に一斉点検を行った。

点検の結果、数値に誤りがあり利用上重大な影響がある調査は、毎月勤労統計調査のみであった。また数値に誤りがあるものの利用上重大な影響がない調査として、2つの基幹統計、16の一般統計が該当した。その他、数値の誤りはないものの、結果の精度に確認を必要とするものや手続き上の問題があるものは161調査であった。

このような状況を踏まえ、統計委員会において、第1次の再発防止策を検討している。現在審議中だが、(1)統計作成プロセスの適正化(PDCAによるガバナンスの確立や調査担当から独立した分析的審査の実施等)(2)誤り発生時の対応(組織内の情報共有のルール策定等)(3)統計作成の基盤整備(職員の育成と統計局等による支援等)――等について提言を予定している。

■ 国が実施する統計調査への意見提出に対する対応状況(櫻川幸恵統計委員会担当室室長)

総務省は、国が実施する統計調査に関する提案募集として、報告者負担の軽減や調査方法の改善等の要望を常時受け付けている。これに対して、昨年、経団連からは125件の提案を受け取った。このうち4月の統計委員会では一次報告分として94件の対応方策を報告したところである。内訳は、「対応済み、または前向きに対応するもの」が34件(例=民間給与実態統計調査、海外事業活動基本調査)、「検討の余地あり」が21件(例=法人企業統計調査、科学技術研究調査)、「対応困難」が39件(例=経済センサス、企業活動基本調査)となっている。なお、残りの31件は、対応方策が決まり次第、統計委員会に報告する予定である。

経団連には、報告者・利用者双方の立場を持つ企業の声として今後とも積極的な提案をお願いしたい。

【経済政策本部】