経団連は6月21日、東京・大手町の経団連会館で、わが国企業のコーポレート・ガバナンス改革を一層加速すべく先進的な取り組みを進める企業の事例を共有するため、各企業のトップを招き、第2回シンポジウム「実効あるコーポレート・ガバナンスの実現に向けて」を開催した。企業のIRや法務の担当者など約200名が参加した。
パネルディスカッションでは、コーポレート・ガバナンスを形式から実質へ変化させるために、取締役会のあり方と投資家との対話をテーマに議論が行われた。パネリストとして、コマツの大橋徹二会長、花王の澤田道隆社長、ゴールドマン・サックス証券のキャシー・松井副会長が参加し、経団連副会長/金融・資本市場委員長である三井住友フィナンシャルグループの國部毅会長がモデレーター兼パネリストを務めた。
大橋会長は、コーポレート・ガバナンス改革の中核は取締役会改革であるとの認識から、取締役会を活性化させるための運営における具体的取り組みについて紹介した。澤田社長からは、取締役会と経営執行部は親子関係のようなものであり、取締役会(親)は経営執行部(子)の能力を最大化しつつリスクを最小化するため責任ある管理を行うことが重要との考えを表明。投資家との対話については、投資家の視点がより長期的になってきており、継続的かつ質のある対話と情報開示の充実が不可欠であるとの認識が共有された。
また、欧米とは異なる日本型コーポレート・ガバナンスの実現に向けて、松井副会長から日本と企業文化の近いドイツの事例が参考になるとの示唆があった。投資に対しより積極的になった家計資産を含む資金がガバナンスの優れた企業に向かうことで、企業の価値の向上や行動につながるとの見方が示された。
最後に國部副会長から議論の総括として、(1)ガバナンスは企業の「経営のあり方そのもの」であり、企業自らが自社に合ったガバナンス体制の強化に取り組むことが必要である(2)その際には、形式的な機関設計にならないよう、経営トップが、そこに〝魂〟を入れて実際に機能させる役割を担う(3)企業自らが自社のガバナンスの特徴や取り組みについての情報開示を創意工夫し、投資家との対話の充実を図ることが重要である――との指摘があった。
ICGNと覚書を締結
同日、経団連は、欧米の主要機関投資家などからなるICGN(International Corporate Governance Network)と覚書を締結した。
覚書は、日本企業のコーポレート・ガバナンス強化と建設的対話を促進するため、経営者と海外投資家との間の関係構築やナレッジ・ビルディングを目的としており、今後経団連ではICGNとの積極的な交流を図っていく。
ICGNのケリー・ワリングCEOは同シンポジウムで来賓あいさつを行い、世界は環境問題や技術進展などの未曽有のリスクに直面しており、取締役会と投資家はリスク対応を求められていると指摘。経団連のSociety 5.0へ向けた取り組みやTCFDへの署名などに支えられ、日本企業の気候変動関連活動についてより開示が充実していくことを確信していると述べた。
【ソーシャル・コミュニケーション本部】