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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年8月8日 No.3419 トルコの内政・外交等について聞く -日本トルコ経済委員会

説明する今井氏

トルコでは、6月23日に最大都市イスタンブールで市長選挙のやり直しが実施され、与党・公正発展党(AKP)が同市で四半世紀ぶりに敗北を喫した。他方、外交面では、ロシア製地対空防衛ミサイルシステム「S-400」のトルコへの搬入を始めたことにより米国が神経を尖らせるなど、北大西洋条約機構(NATO)同盟国間で緊張がみられる。

そこで、経団連の日本トルコ経済委員会(山西健一郎委員長、斎藤保委員長)は7月23日、東京・大手町の経団連会館で日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所の今井宏平研究員から、トルコの内政・外交の展望等について説明を聞き、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 内政=地方選挙の余波

今年3月に行われた地方選挙では、AKPが約半分の都市で勝利を収めるも、国政への影響が大きい三大都市(イスタンブール、アンカラ、イズミル)では敗北を喫した。特に、再選挙が行われたイスタンブール市長選では、AKPが元首相のビナリ・ユルドゥルム氏を担いだにもかかわらず、野党候補のエクレム・イマムオール氏に二度にわたり敗北した。

AKPは選挙を通して、テロとの戦いやナショナリズムを強調する姿勢を貫いたが、昨年8月以降低迷する経済の立て直しに関して有効な政策を提示できず、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の有する強い権限に、一部の国民が不満をくすぶらせている現状と相まって、後退する結果となった。

2023年まで国政・地方選挙とも予定されていないとはいえ、早期選挙の可能性もあり、今後の国政への影響を注視していく必要がある。

■ 外交=対米関係悪化の余波

トルコが7月にロシアからS-400を搬入したことを受け、NATOの情報がロシア側に漏洩することを懸念し、米国のドナルド・トランプ大統領は、米国製戦闘機F-35の売却凍結を決定した。

米国とトルコの関係は、すでにオバマ政権第二期以降、クルド人をめぐる問題や16年7月のクーデター未遂、さらには米国人牧師の拘束に端を発する経済制裁等により、悪化の一途をたどっていた。対立の根底には、クルド人問題やギュレン運動の活動等に関するトルコの脅威認識を米国が共有していないことへのトルコ政府のいら立ちがあることを指摘できよう。

米国は目下、中東から徐々に撤退していく姿勢を示しつつあり、トルコはカタールとともにサウジアラビア、UAE、エジプトなどとの対立構造が目立ってきている。トルコはこうした状況下、シリア内戦等で中東への関与を深めるロシアと協力することにより脅威を除去しようとしている。

S-400に端を発する対米関係等の悪化によって、内政への影響も懸念される。F-35の売却凍結はさておき、同問題で米国による対トルコ制裁が発動された場合、すでにインフレやリラ安で苦しむトルコ経済に大きな打撃となり、エルドアン政権の求心力のさらなる低下は避けられないだろう。

【国際経済本部】

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