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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年9月5日 No.3421 むつ小川原開発推進委員会2019年度総会を開催 -核不拡散とエネルギー安全保障について聞く

経団連のむつ小川原開発推進委員会(泉澤清次委員長)は8月7日、東京・大手町の経団連会館で2019年度の総会を開催した。

むつ小川原開発地区(青森県六ケ所村)は、経団連がかねて開発支援に携わってきた地域であり、現在では原子力、再生可能エネルギーなどの多くの最先端施設が立地する総合エネルギー・研究開発拠点が形成されつつある。

総会では、同地区開発の最新の状況と、同委員会の昨年度活動報告・収支決算および今年度活動計画・収支予算が報告された。また、一橋大学国際・公共政策大学院の秋山信将大学院長を来賓に迎え、イラン、北朝鮮を中心に核不拡散とエネルギー安全保障について説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ 核をめぐり分裂する世界

大国間関係の悪化やAI等の新興技術の発展を受けて、核兵器国を中心に核の役割が再評価されている。一方、一部非核兵器国は核兵器禁止条約を採択するなど、強硬に核軍縮を主張している。両者の分裂によりNPT(核拡散防止条約)とIAEA(国際原子力機関)を軸とする現行核不拡散レジームは危機的状況にある。

■ 北朝鮮・イランの核開発問題

北朝鮮・イランの核開発問題は、規制の核不拡散レジームの実効性に疑問を投げかけている。

北朝鮮にとって核兵器は体制保証のためのツールである。核放棄後に体制が崩壊したリビアの前例もあり、簡単に手放すことはない。また、非核化へのステップとなる申告・検証プロセスは「敵国に攻撃目標のリストを提供する」こととみなされるため、現時点で北朝鮮が受け入れる可能性は低い。日本を含む国際社会は原則論にとらわれず柔軟に対応する必要がある。

イランをめぐっては、JCPOA(包括的共同行動計画)により核拡散の懸念は相当程度抑制されていた。問題の根幹は、国際社会に復帰したイランが地域覇権を確立することへの警戒感という地政学問題である。中東各国は中国、ロシア等からの原子力の導入を検討しており、世界一核拡散の懸念がある地域になっている。

日本は、覚悟があれば米国・イラン間の仲介を担うこともできるだろう。中東地域のエネルギー安全保障上の重要性と合わせて考えるべきである。

■ 核不拡散とエネルギー安全保障

中国の南シナ海進出に対する米国の対応にみられるように、核の存在は域外国の関与に対する一定の抑止となる。今後、中東でも同様の事態が起こる可能性があり、エネルギー安全保障上も核不拡散は重要といえる。

日本としては自衛隊や外交アセット等の政策資源をどのように活用するか、中長期的構想を着実に練る必要がある。

■ 日本の原子力産業への示唆

海外には、日本の安全基準は国際標準に比べ過剰だとみる向きもある。一方で、再稼働が進まない現状から温暖化対策に消極的との疑念も抱かれており、より現実的な規制のあり方を考えるべきである。同時に、福島第一原子力発電所事故の教訓の発信も期待されている。

核燃料サイクルについては、数十年後の主力エネルギー源が予想できない以上、国際社会の信頼を得られるプルトニウム管理を行っていく前提のもと、長期的視野で戦略を練る必要がある。

【環境エネルギー本部】

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