経団連は10月7日、東京・大手町の経団連会館で教育・大学改革推進委員会企画部会(宮田一雄部会長)を開催した。文部科学省の矢野和彦大臣官房審議官(初等中等教育局担当)から、初等中等教育における改革等の動向について説明を聞いた。概要は次のとおり。
■ 中教審への諮問「新しい時代の初等中等教育の在り方について」
日本の15歳の子どもの学力水準が世界トップレベルを維持するとともに、学力の底上げにより成績上位層と成績下位層との平均正答率の差が縮小するなど、現状では「日本型学校教育」は成果を挙げているといえる。一方、児童の語彙力・読解力については課題が指摘されており、さらに高等学校段階になると学習時間の減少や学習意欲の希薄化、大学受験に最低限必要な科目以外を真剣に学ぶ動機の低下がみられるなどの課題を抱えている。
かかる状況のなか、今年4月には柴山昌彦文部科学大臣(当時)が中央教育審議会に「新しい時代の初等中等教育の在り方について」を諮問し、現在、同審議会にて新時代に対応した義務教育および高等学校教育のあり方や増加する外国人児童生徒等への教育のあり方、これからの時代に応じた教師のあり方や教育環境の整備等について審議が行われている。
■ 新学習指導要領
新たな学習指導要領に基づく教育が、小学校では2020年度、中学校では21年度、高等学校では22年度から、それぞれ実施される。新学習指導要領の主眼は、(1)生きて働く知識・技能の習得(2)思考力・判断力・表現力等の育成(3)学びに向かう力・人間性等の涵養――の3本柱であり、これに沿って、主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の推進による学びのプロセスの改善や外国語教育の抜本的強化、プログラミング教育の充実など、新たな時代に必要となる資質・能力を踏まえた学びの中身の見直しを進める。また、実社会との関わりから問いを見いだし解決していく力を育成するための「総合的な探求の時間」も設ける。
■ 学校における働き方改革
小学校教員の3分の1、中学校教員の3分の2が過労死ラインの勤務時間まで働いており、かつ10年前と比べて勤務時間が増加している。そうした状況を受けて、文科省は、今年秋の臨時国会に提出する法案に、1年単位の変形労働時間制の導入と、1年間の超過勤務時間が360時間を超えてはいけないとした勤務時間上限ガイドラインに法的根拠を与える条項を盛り込む予定である。
■ 先端技術を活用した教育の推進
デジタル教科書・AIドリルや遠隔・オンライン教育など先端技術を学校教育に採り入れることができれば、誰一人取り残すことのない個別最適化された学びを実現できるが、先端技術活用の前提となる学校現場におけるICT環境は不十分であり、早急な充実が求められる。そこで文科省は、令和2年度予算概算要求で「GIGAスクールネットワーク構想」を打ち出し、生徒1人1台の学習用コンピューターの整備や高速・大容量のネットワークの実現を強力に推進している。これについては、経済界の理解と支援をぜひお願いしたい。
【SDGs本部】