約8200万もの人口や生産性の高い若年労働力を豊富に有し、欧州・中央アジア・中東・北アフリカの結節点に位置するトルコは、消費者市場として、また、第三国への輸出を視野に入れた投資先としても戦略的に重要なパートナーである。
このため、経団連では数次にわたって提言を発出するなど(注)、包括的で質の高い日・トルコ経済連携協定(EPA)の早期締結を強く訴えてきた。こうした働きかけを受け、両国政府間では2019年内の妥結を目指し、5年にも及ぶ交渉が進められている。
こうしたなか、日本トルコ経済委員会(山西健一郎委員長、斎藤保委員長)は11月1日、東京・大手町の経団連会館で、トルコ海外経済評議会(DEIK)のシェリフ・トスヤル・トルコ日本経済委員長と山西副会長・委員長を共同議長とする第25回日本トルコ合同経済委員会を開催した。
同会合では、宮本周司経済産業大臣政務官、ムラット・メルジャン駐日トルコ大使を来賓に迎え、日本・トルコ双方の関係者約150名参加のもと、終日熱のこもった議論が行われた。各セッションの議論の概要は次のとおり。
■ トルコのビジネス環境
第1セッションでは、日・トルコEPA等の制度的インフラや、投資インセンティブを含むトルコのビジネス環境等を踏まえ、二国間win―winビジネスの拡大と深化に向けた方策等について分野横断的な議論が行われた。
経団連側からは、特に輸出基地としてのトルコの競争力を維持するための関税撤廃、日本人駐在員への就業ビザ発給手続き等の迅速化、輸出入諸手続きの透明性確保等を具体的に要望した。
これに対しトルコ側は、投資家保護の法的枠組み等を紹介しつつ、中長期的な二国間連携に対する期待を表明した。
■ ビジネス拡大に向けたファイナンス・スキーム
第2セッションでは、主に輸出信用や貿易保険等のファイナンス・スキームを活用した資金調達・協調融資等に焦点を当てた議論が行われた。
経団連側からは、第7回アフリカ開発会議(8月、横浜)でも注目された、アフリカなど第三国でのインフラ案件に関する両国企業の協働によるファイナンスの仕組み等について、具体例を交えて説明した。
一方、トルコ側も、エネルギーやインフラ等のプロジェクトの具体例を挙げつつ、スクーク(イスラム債)等の資金調達の仕組みを紹介した。
■ win―winビジネスの構築に向けて
最後の第3セッションでは、トルコ建国100周年(2023年)に向けた旺盛なインフラ需要やエネルギー消費拡大を背景に、有望な取り組みが紹介された。
例えば、液化天然ガス等のエネルギー供給、両国の観光資源のポテンシャルを踏まえた人的交流の拡大、さらにアフリカ市場への共同進出など、両国企業の連携の可能性について活発な討議が行われた。
■ 主な成果と今後の取り組み
日本では4年ぶりの開催となった今次会合では、両国経済界の共通の要望として、包括的かつ高水準の日・トルコEPAの早期実現をあらためて訴求するとともに、インフラ整備やエネルギー開発、アフリカなど第三国への進出に向けた互恵的なビジネス協力の可能性を確認することができた。
経団連としては引き続き、win―winビジネスの拡大と深化という観点から、日・トルコEPAの早期締結やトルコのビジネス環境の改善を働きかけていく。
(注)「日・トルコ経済連携協定(EPA)交渉の早期開始を求める」(12年3月21日)、
緊急提言「日・トルコ経済連携協定(EPA)交渉の早期開始を求める」(13年12月17日)
【国際経済本部】