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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年11月14日 No.3431 第29回「経団連 Power Up カレッジ」 -「平時の構造改革、海外展開」/東京海上日動火災保険の隅相談役が講演

経団連事業サービス(中西宏明会長)は10月25日、東京・大手町の経団連会館で第29回「経団連 Power Up カレッジ」を開催し、東京海上日動火災保険の隅修三相談役から講演を聞いた。概要は次のとおり。

■ 事業の状況

当社は、わが国初の保険会社として1879年に渋沢栄一、岩崎彌太郎らが創業、翌年にロンドン、パリ、ニューヨークで営業を開始した、元来海外展開に積極的な会社である。2008年以降に英米の保険会社の買収を進めたことも奏功し、現在は利益の半分を海外部門が稼いでいる。

21世紀に入って、損保業界に逆風が吹き荒れている。04年に台風が日本に10回上陸、05年に保険業界で保険金不払い問題が発覚して業務停止処分を受け、08年にはリーマン・ショック、11年には東日本大震災やタイの大洪水が起こり、つい最近では台風19号による大きな被害が発生するなど、厳しい経営環境が続いている。

■ 国内ビジネスプロセスの抜本的構造改革

2000年代初頭、「保険自由化」に伴って業界内の競争が激しくなり、当社は売上も利益も減り、社内に閉塞感、疲労感が漂っていた。当時、保険会社は紙と現金を扱う巨大な事務処理会社であり、商品が変わるたびに紙のマニュアルの修正作業が発生していた。システムも約20年の間、部分的に改良を重ねた古いものになっていた。当時、商品・事務・システム担当役員だった私は、このままでは市場から退出を余儀なくされるという強い危機感を抱き、経営陣に対して抜本的な業務改革を提案、説得して実行に移した。

数百億円を投資して商品・事務・システムの流れを一体的に変え、業務量を社内は30%、代理店は50%削減した。これはまさに現在日本中で行われている「働き方改革」のはしりであり、社員が代理店やお客さまとの接点を増やせるようになって、女性が働きやすい環境も整った。社内の閉塞感が消え、企業体質が明るく前向きになった。

教科書的なアプローチとは異なるが、改革はまず仕事の仕組みを変えることが大事だ。それにより、社員の行動が変わり、考え方が変わり、企業文化が変わってくる。シンプル、スピーディー、フレキシブルで透明性の高いビジネスプロセスこそ競争力の源泉である。

■ 海外事業の改革、戦略

戦前、海外事業は売上の3分の2を占めていた。戦争によりすべてを失ったが、戦後の日本企業の海外進出に合わせて海外事業を再開した。1990年代に米国での買収失敗もあり、海外には二の足を踏む感が強いなか、2000年にはバミューダに再保険会社を設立、世界の自然災害を証券化した商品を扱い、その後の海外展開の起点となった。

私が社長になった直後の08年にイギリスのキルン社とアメリカのフィラデルフィア社、12年にアメリカのデルファイ社、そして15年にアメリカのHCC社を相次いで買収した。買収が立て続けに成功した理由は、買収した会社の経営を尊重するという当社のマネジメントスタイルやビジネス哲学に共感してもらったことが大きいと考えている。

M&Aにあたって相手先をチェックするポイントは、(1)健全な経営哲学を持った経営陣による健全な組織運営がなされていること(2)秀でたビジネスモデルを持って競争力があること(3)将来の成長が期待できること――である。

最後に、私が一連のM&Aを通して重要と感じたことをお伝えする。(1)M&Aはゴールではなくスタートであるということ(2)M&Aの基本理念を持つべきこと(3)適切なパートナーを見つけること(4)買収後も徹底したデューディリジェンスを行い、課題を明らかにすること(5)ガバナンスフレームワークの納得感・透明性・合理性を高めて信頼関係を築くこと――である。

【経団連事業サービス】

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