経団連(中西宏明会長)は12月17日、提言「経済成長と安全・安心に向けた主体的・戦略的な宇宙開発利用の推進」を発表した。政府において、宇宙政策のビジョンともいえる宇宙基本計画の改定の議論が行われていることに照らし(2020年半ば決定予定)、産業界の意見を取りまとめたもの。経済成長と国民の安全・安心におけるデータの重要性が大きく高まるなか、これまで以上に官民双方が宇宙を主体的・戦略的に活用していくべきことを強調している。
今日、「データは経済成長の燃料」とも「21世紀はデータの世紀」ともいわれている。提言では、地球上のさまざまな場所からデータを集め、多くの企業や人々にデータを効率的に提供するうえで、「宇宙には極めて大きなアドバンテージがある」とし、海洋上のタイムリーな監視は、宇宙の活用なくしては実現しないこと、衛星の測位データによってナビゲーションサービスの安価・容易な利用が可能になっていることなどを指摘した。そのうえで、衛星データは、ビッグデータの一部として、経済活動の新たな価値を生み出し社会的課題を解決する役割を果たしているとし、「Society 5.0実現のカギ」と評価した。
提言では、宇宙開発利用に向けて、「官」「民」それぞれがより積極的な取り組みを進める必要性が強調された。政府に対しては、(1)経済と安全保障における宇宙の重要性が大きく高まっているいまこそ、宇宙開発利用の理念を明確に打ち出し、宇宙に対する国民の支持をより強固なものとすること(2)政府衛星によるデータの収集範囲・期間を明確化し、国民視点からサービスを具体的に充実させていくこと――などを求めた。加えて、民間活力が最大限発揮される環境整備として、衛星で利用する周波数の国内調整の迅速化、政府衛星データへのアクセス改善、高リスクプロジェクトへの政府系金融機関等による優先的支援の実施などを提案した。また、わが国は国際協力の推進に主導的な役割を果たすべきとしたうえで、宇宙分野での日米間の協力と、インド太平洋地域におけるイニシアティブの重要性を強調した。
宇宙を主体的・戦略的に活用していくためには、ロケットを含む輸送系と衛星等の情報系の双方で、技術的自律性の強化と国際競争力強化の両立が求められる。また、欧米では、数百もの小型衛星を打ち上げ、通信ネットワークを構築するといった野心的なプロジェクトが進行している。そこで提言では、小型衛星の量産化技術の確立など、このようなディスラプティブ(非連続)な変化に対応した戦略的な研究開発プログラムの立ち上げなどを求めた。
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経団連は、同提言を政府の宇宙政策委員会の基本政策部会などで説明し、その実現に向け積極的な働きかけを行っていく。
【産業技術本部】