経団連のサプライチェーン委員会企画部会(藪重洋部会長)は12月17日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、全国銀行協会の小川幹夫事務・決済システム部長および全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)の千葉勇一企画部長から、「経理業務の電子化・高度化がもたらす業務の効率化と生産性向上」等について、Tranzax社の大塚博之社長から「Fintechを活用した中小企業ファイナンスの高度化」について、それぞれ説明を聞いた。概要は次のとおり。
■ 全国銀行協会、全銀ネット説明
「経理業務の電子化・高度化がもたらす業務の効率化と生産性向上等」
労働力人口の減少等に伴い人手不足が深刻化するなか、デジタル技術の進展を踏まえた業務効率化、生産性向上が急務。とりわけ銀行界としては、経理業務等、企業のバックオフィス業務の電子化・高度化が重要な課題と認識しており、こうした課題の解決に向けた取り組みとして、「全銀EDIシステム(ZEDI)」「でんさい」「インターネットバンキング」「税・公金の電子納付」の普及を推進している。
このうち、2018年12月に稼働した「全銀EDIシステム(ZEDI)」は、振込電文に添付できる取引情報(金融EDI情報)を大幅に拡充し、受発注等の商流情報と連携させることにより、売掛金の消込作業の自動化等の効率化を実現するものである。ZEDIは、多くの金融機関で利用可能となっているものの、企業への普及は道半ばである。銀行界としては、振込電文に添付するファイルを簡易に作成できる機能を無料で提供しているほか、業界横断的な金融EDIの情報項目として、「S―ZEDI」を策定している。加えて、23年のインボイス制度導入等、将来発生するイベントも視野に入れて普及・広報活動に取り組む。
■ Tranzax説明
「Fintechを活用した中小企業ファイナンスの高度化」
当社は電子債権記録機関として、電子記録債権を活用した中小・ベンチャー企業の短期資金調達のサポート事業を手掛けている。電子記録債権は法律上、電子債権記録機関が作成する記録原簿上へ電子的な記録を行うことでその権利内容が認められるものであり、これを活用することで売掛債権等、従来取り扱えなかった領域において譲渡担保融資を扱うことが可能となった。
当社のPO(Purchase Order)ファイナンスは、電子記録債権を活用した譲渡担保融資の仕組みを、中小企業の早期資金調達の手法として商品化したものである。従来から手形取引やファクタリング等、出荷・納品後の代金確定時点で資金調達を行う手法は存在したが、人員確保や資材の購入等、実際に資金が必要になるのは受発注時点である。そのため、受発注書を検収が終わるまでの間、支払いを遅らせることができる権利(抗弁)を付与したかたちで電子記録債権化し、これを担保に金融機関が融資を行えるようにした。中小企業にとっては、早期の資金確保に加え、発注者である大企業の信用に基づいた低利の融資が可能となるほか、発注企業や金融機関にとってもメリットがある。現在、政府の補助金事業とも連携しながら、提携金融機関を拡大しているところであり、今後さまざまなシチュエーションで活用されることを期待している。
【産業政策本部】