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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年1月23日 No.3439 「COP25報告と欧州で進むサスティナブル・ファイナンスについて」 -21世紀政策研究所がセミナー開催

21世紀政策研究所(飯島彰己所長)は12月19日、東京・大手町の経団連会館でセミナー「COP25報告と欧州で進むサスティナブル・ファイナンスについて」を開催し、同研究所環境・エネルギー研究会の有馬純研究主幹(東京大学公共政策大学院教授)と竹内純子研究副主幹(筑波大学客員教授)が、COP25(国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議)やサスティナブル・ファイナンスをめぐる国際的な議論の動向について説明した。概要は次のとおり。

■ COP25を含む国際情勢とわが国の課題(有馬研究主幹)

有馬氏

COP25の議論では、野心的な「1.5度目標」がデファクトスタンダードになりつつあり、環境原理主義的な側面が強まっている。それを牽引しているのは欧州である。欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は温室効果ガスの削減目標引き上げ、国境調整炭素税の導入などを含む「European Green Deal」を掲げている。再来年のG20はイタリア、G7は英国が議長国を務めるが、この2国が連携しながら、「European Green Deal」を梃子に国際的な圧力をかけてくることが想定される。

一方、中国やインド、米国などはエネルギーコストの引き上げに対して強く抵抗することが想定される。そのような状況のなか、欧州だけが野心レベルを引き上げ、コストが高まることを受け入れられるのか、是正措置としての国境調整措置は実現可能なのかという点に注目すべきである。

環境問題について欧州がリーダーシップをとる2020年、21年の世界において、日本は2050年ネットゼロエミッションの表明、石炭火力輸出抑制等のプレッシャーを受けると思われる。また米国大統領選で民主党政権が誕生すると、欧州と米国のスタンスが近くなり、日本の立場が悪くなる可能性がある。

そのような状況下では、日本国内において、野心的な目標を表明せざるを得ないとの意見が出てくることも想定され、それに伴い、達成に向けた具体策としてカーボンプライシングや炭素税の導入が検討されるようになる可能性も否定できない。日本の長期戦略の柱はイノベーションである。COP26に向けて、少しでも具体的な進展を図り、実現可能性をアピールすることが求められる。

また、欧州も決して一枚岩ではなく、東欧諸国は削減目標の引き上げに反対している。また、インド、ASEANを中心としたアジア諸国も同様のスタンスである。これらの国との連携を強化し、発言力の向上に努めることも重要である。

■ 欧州で進むサスティナブル・ファイナンスの議論(竹内研究副主幹)

竹内氏

サスティナブル・ファイナンスをめぐる議論は、当初は投資判断基準に必要な情報に関する自主的な開示を求めるという内容で行われたが、近年、欧州では法制化が進められている。

パリ協定では、先進国の途上国に対する資金支援について、公的資金だけでなく民間の資金についても流れをつくることが義務づけられている。これを受け、欧州は18年3月にアクションプランを発表した。その枠組みの出発点が、活動や技術について、何がグリーンで何がブラウンなのかの分類法であるタクソノミーである。EUは、19年12月19日にタクソノミーの枠組み規則案について合意した。このような法制度は、当初は欧州金融市場を対象とすることを想定していたが、足元ではグローバルルール化に加え、非金融セクターも対象とすることを目指し、議論されている。

また、タクソノミーは金融機関の自己資本比率規制にも応用される可能性がある。それに伴い、タクソノミーに合致した経済活動や技術に優先的にファイナンスするようになるものと思われる。

このように、タクソノミーが整備されることの影響は大きく、日本の産業界からもロビーイングすることが重要である。

【21世紀政策研究所】

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