2月3日のアイオワ州党員集会をもって、いよいよ2020年大統領選挙に向けた民主党予備選の投票が始まる。一時は25人を超えた民主党候補者も現在は12人に減り、そのうち主要候補はアイオワ前の最後のテレビ討論会に参加した6人にほぼ絞られた。
全米の世論調査結果が注目されがちだが、大統領選本選が各州の結果による選挙人団によって決まるのと同様、民主党の候補指名も各州における予備選挙や党員集会の結果で決まるものであり、個別州における世論調査の方に注目する必要がある。さらに、予備選や党員集会は数カ月にわたって行われるため、早く実施する州の結果がドミノ倒しのようにその後の州の結果に影響を及ぼす制度になっている。アイオワ州の結果が翌週のニューハンプシャー州に影響し、ニューハンプシャー州はその後のネバダ州やサウスカロライナ州にも影響していく。この影響は、アイオワ州の勝者が勢いに乗るような追い風効果の場合もあるが、逆効果の可能性もあり、実際現職のいなかった民主党予備選直近3回のうち、ニューハンプシャー州は2回アイオワとは異なる候補を勝たせるというあまのじゃくな結果を出している(共和党の非現職予備選では4回連続アイオワと異なる勝者)。
アイオワ州での勝利がその後の州における成功につながるとは限らない一方で、アイオワで予想外につまずくことがあれば致命傷となりかねない。専門家の間では、3位以内に入らなければ生き残れないという意味で「アイオワ発の切符は3枚まで」と歴史的に言われてきた。直近のアイオワ州世論調査では、バイデン前副大統領、サンダース上院議員、ブティジェッジ前インディアナ州サウスベンド市長とウォーレン上院議員の4名が4%以内の差でひしめき合っており、今年の切符は4枚発券される可能性がある。民主党・共和党ともアイオワで5位以下に終わった候補で党の候補に指名された者はいない。
2月に行われるこの4州は、それぞれの日には予備選・党員集会を行う他の州はなく、大きな影響力を持つ。3月に入ると、3月3日のスーパーチューズデーに14州が集中するなど、複数の州の予備選・党員集会が重なるようになる。2月までは候補者本人が直接出向いて選挙活動ができるが、3月以降は同時に幅広いオーディエンスにアピールするためにテレビ広告に資金を費やす必要が出てくる。ここで撹乱要因となり得るのが、選挙資金すべてを600億ドル近いともいわれる私財で賄うブルームバーグ前ニューヨーク市長である。彼は最初の4州には参戦せず、膨大な資金を投じて前代未聞の規模の広告作戦によってスーパーチューズデー以降の勝利を目指している。
ついに民主党予備選の戦いの火蓋が切られるが、その性質は全州総当たりのリーグ戦よりも特に緒戦については毎週生き残りを賭けたトーナメント戦の要素も含んでいるといえる。
【米国事務所】