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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年2月6日 No.3441 各領域を牽引するトップ人材・エリート人材の育成等について聞く -教育・大学改革推進委員会企画部会

経団連は1月17日、東京・大手町の経団連会館で教育・大学改革推進委員会企画部会(宮田一雄部会長)を開催した。東京大学先端科学技術研究センター(先端研)の中邑賢龍教授と開成中学校・高等学校の柳沢幸雄校長から、各領域を牽引するトップ人材・エリート人材の育成等について説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ 異才発掘プロジェクト
~東京大学におけるユニークな子どもの教育(中邑教授)

「明るく仲良く元気よく」をスローガンに掲げてオールマイティーで素直かつ協調性のある人材を育成する日本の教育システムは、多様性を認めず、空気を読まないユニークな子どもを排除している。このため、日本財団の調査によれば、中学生の10人に1人が不登校状態にある。また、環境に適応できない子どもは発達障害と認定され、治療の対象となっている。しかし、発達障害は性格や認知の特性の偏りにすぎず、発達障害と認定されても環境が合えば何の問題もなく生活できる人が多い。社会の枠の中に押し込めてイノベーションの芽を持つ発達障害のある子どもをつぶしている社会こそが問題である。

そこで先端研は、ユニークな子どもたちがつぶされず、異才と呼ばれる人が活躍しやすい社会を実現するためには、学校以外の学びの場も公教育として取り入れる必要があると考え、そのモデル事業として、日本財団と共同で2014年から「異才発掘プロジェクト ROCKET」を始めた。同プロジェクトでは、突出した才能を持つが現状の教育環境になじめず、不登校傾向にある小学3年生~中学3年生の子どもを選抜し、継続的な学習機会を保障するとともに、突き抜けた子どもたちの「凸」の部分を伸ばせるよう、場所も時間割も教科書も超えて自分の興味関心のあることを探求していく学びを自ら選べる学習環境を提供している。

こうした取り組みを通じて得られた経験を活かし、AI時代でも求められる、(1)生活と結びついた知識(2)環境適応力(3)多様性(4)好きなものに徹底的に取り組む力――の4つの能力を育成するために、日本各地が学び場となってそれぞれの地域の特色を活かしたプログラムを全国で展開する「School of Nippon構想」を進めている。

■ Society 5.0時代を担う子どもたちの成長を育む教育(柳沢校長)

(1)自己肯定感、自信が低い日本の若者

内閣府「子ども・若者白書」によると、日本の若者は諸外国と比べて、自己を肯定的にとらえて自信を持っている者の割合が低い。若者の自己肯定感、自信が低いのは、大人たちの自己肯定感、自信が低いことや褒めない文化が原因である。日本の若者とは対照的に、褒める教育が行われているアメリカの若者は、諸外国のなかでも自己肯定感、自信が特に高い。こうしたなかで、日本社会の国際化がさらに進み在留外国人数が増加していけば、日本の若者は、海外に行かなくても自己肯定感にあふれ強い自信を持った世界の若者と協力、競争しながら生きていかざるを得ない。

(2)自己肯定感、自信を高める開成中学・高校の教育

自己肯定感、自信の源泉は自主的・自律的な行動で得た達成感である。自分で自主的に選んだ事柄を自分で考え、困難に遭遇しても自律的に活動して困難を乗り越えて成果に到達できたという達成感が得られる教育が求められる。開成中学・高校では、教職員は生徒の自主的な取り組みを否定せず「やってみなはれ」と言って、自主性、自律性を育んでいる。また、日本は、他の子どもとの比較(水平比較)をしがちで、その最たるものが偏差値だが、自己肯定感、自信を持った子どもを育てるには、子どもの以前の状態と今との比較(垂直比較)により、進歩した点や改良が加えられた点を具体的に褒めることが重要である。こうした教育を実践している当校の生徒は、諸外国並みに自己肯定感、自信が高い。自己肯定感、自信の涵養こそが真の国際化教育である。

【SDGs本部】

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