経団連は2月3日、東京・大手町の経団連会館で教育・大学改革推進委員会企画部会(宮田一雄部会長)を開催した。千代田区立麹町中学校の工藤勇一校長から、同校における教育改革の取り組み等について説明を聞いた。概要は次のとおり。
■ 自律した生徒の育成を最上位目的に
学校は、人が社会のなかでよりよく生きていくための準備の場である。ロボットやAI技術の進展で経済構造が大きく変化している現在、学校は「自分で考え、自分で判断、自分で決定、自分で行動」という「自律」を身につけさせることを最上位の目的としなければならない。しかし、現代の日本の教育は、子どもに手をかける方向に行きがちで、手をかければかけるほど子どもは自律できなくなり、うまくいかないことの責任を他に転嫁するようになる。
その原因の一つに、学校教育における手段の目的化が挙げられる。「自律した生徒の育成」が学校教育の目的であるにもかかわらず、そのための手段である基礎学力の習得や、学習指導要領に定められた授業時数の実施などが目的と化してしまっている。
当校では、「自律」と「尊重」「創造」を最上位の目的とすることが教員、保護者、生徒などすべての関係者に共有されている。学校運営も授業・学習のやり方も、この目的を達成するためにどうすべきかという観点から、すべての関係者が当事者となり、当事者間で対話を尽くした結果、合意に至ったものである。決して校長のトップダウンによるものではない。例えば、当校の教員は、生徒に3年間「勉強しろ」とは言わない。宿題も課さないし、定期考査も廃止して、代わりに単元テストを導入した。単元テストでは、生徒が納得のいく点数を取れなければ、自己申告により再テストを受けられるようにし、再テストを受ける場合は再テストの点数が成績となる。このため生徒は、1回目のテストで間違えたところをわかるようにしようとして、生徒同士で学び合ったり、教師に自発的に質問したりするなどしている。
学ぶには、よい教材と、わからない点を質問できる相手がいればよい。その意味で、優秀な教員とは、教え方が上手な教員ではなく、質問を受けて討議をうまくファシリテートできる教員だと考える。
■ 学校をリ・デザインする
学校では、これまで教師の立場から画一的な教育が行われてきたが、今後は学習者主体で、多様な子どもたちにとって個別最適な教育を行うことが重要である。例えば、知的障害のある子どもを「特別支援学級」で健常者の子どもと別に学ばせるのではなく、一緒に学ばせることが必要である。文部科学省は、学習指導要領に基づく授業時数をこなすことを重視する履修主義から、生徒一人ひとりの理解度に基づいた到達度主義への転換を図る必要がある。
【SDGs本部】