経団連の経済法規委員会企画部会(佐久間総一郎部会長)は3月11日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、消費者庁から3月6日に国会に提出された「公益通報者保護法」の改正法案について説明を聞くとともに意見交換を行った。
公益通報者保護法は、公益通報を理由とする公益通報者の解雇の無効等について定めることにより、公益通報者の保護や法令遵守を図る法律。消費者庁から説明のあった主な改正内容は次のとおり。
なお、施行日は、公布の日から2年以内において政令で定める日となる。
(1)公益通報者の範囲拡大
法律上の公益通報者として保護されるのは、これまで「労働者」だけであったところ、「退職者(退職後1年以内)」および「役員(原則として、事業者内で調査是正の取り組みを事前に行う必要あり)」も対象となる。
(2)内部通報体制整備の義務化
従業員数300名超の企業は、公益通報を受け付けし、また適切に対応するために必要な体制整備が義務づけられる。具体的な内容については、別途指針が策定される。
(3)内部通報対応に従事する者への罰則付き守秘義務の導入
従業員数300名超の企業は、公益通報の受付・調査・是正を行う業務に従事する者(公益通報対応業務従事者)を定めなければならない。公益通報対応業務従事者として定められた者は、その業務上知り得た公益通報者を特定させる情報に関して法律上の守秘義務を負い、違反した場合は30万円以下の罰金(刑事罰)が科される。公益通報対応業務従事者の選定のあり方については、内部通報体制整備の内容として、上記指針において示される。
(4)報道機関等への通報にかかる保護要件の緩和
通報者が報道機関等に対して事業者の不正を通報する場合、当該通報が公益通報として保護されるためには、(1)不正の目的の通報ではないこと(2)不正が行われていると信ずるに足りる相当の理由があること(真実相当性要件)(3)特定事由に該当すること――の3つの要件を満たす必要がある。今回の改正では、(3)の特定事由に、「内部通報を行うと通報者を特定させる情報が洩れると信ずるに足りる相当の理由がある場合」「個人の財産に対する損害(回復困難または重大なもの)がある場合」を加える。
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改正内容に関する説明を受けて、出席した委員からは、特に、公益通報対応業務従事者に対する罰則付きの守秘義務について、実務上の懸念が多数示された。
最後に、佐久間部会長から、消費者庁に対して以下のコメントがあった。
守秘義務の対象となる「公益通報対応業務従事者」の範囲および整備すべき内部通報体制、守秘義務の対象外とされる「正当な理由」の解釈について、指針や逐条解説等で定める際には、実務に携わる事業者の意見も参考にしてほしい
どういった制度とすることが、真に事業者の自浄作用の強化につながり、ひいては国民の利益につながるのか、現場の実務を踏まえ、机上の理論にこだわることなく、地に足がついた制度としてほしい
【経済基盤本部】