経団連は、ジェトロ事務所長による現地情勢説明会をオンラインで開催している。6月23日のベトナムおよび6月26日のインドネシアに関する説明の概要は次のとおり。
■ ベトナム(中島丈雄ハノイ事務所長、比良井慎司ホーチミン事務所長)
ベトナムは3月に新型コロナウイルスの感染が拡大したが、生活必需品・サービスを除く店舗などの営業停止、不要不急の外出制限、外国人の入国の原則停止、徹底した追跡・検査・隔離・治療など、政府による迅速かつ厳格な措置が奏功し、感染者数は低水準で推移、死者数もゼロとなっている。こうした感染防止措置は海外からも高い評価を得ている。すでに各種の制限は段階的に緩和されており、市中感染も長らく確認されていないことから、マスクを着用しない国民も増えている。小売や外食への客足は徐々に回復しているほか、観客を入れたスポーツイベントが再開されるなど、通常の生活に戻りつつある。
ベトナムの2020年第1四半期の経済成長率は約3.7%増であり、周辺国と比較して悪くない数字とはいえ、リーマンショック以来の低水準である。その主な要因としては、観光、小売などサービス業が大きく落ち込んだことが挙げられる。製造業は、調達の遅延・停止や物流コストの上昇などはあるものの、工場の稼働停止は限られたことから、影響は比較的軽微であった。しかしながら、今後、外需低迷による影響が予想される。
好循環にあった日越経済関係は、新型コロナの影響により、サプライチェーン、投資、人の移動などが停滞し、難しい局面にある。また、今後、ベトナムがニューノーマルに向かうためには、産業の高度化、デジタル化、中所得国の罠(注)の回避、環境保護、スタートアップの育成などが課題であり、日本が協力できる余地は大きい。最近では、ベトナムのスタートアップと日本企業の連携が進んでいる。特にコロナ禍で、ECや教育、医療などの分野で成功するベトナムのスタートアップに関心が集まっており、今後の動向が注目される。
(注)多くの途上国が経済発展により1人当たりGDPが中程度の水準(中所得)に達した後、発展パターンや戦略を転換できず、成長率が低下、あるいは長期にわたって低迷すること
■ インドネシア(鈴木啓之ジャカルタ事務所長)
インドネシアは、各地方政府が4月から「大規模な社会制限(PSBB)」を発動したが、6月に入っても感染は収まらず、6月24日時点で感染者数は累計で東南アジア最大となっている。PSBBによる経済的影響が大きかったこともあり、6月からは新型コロナと共存しながら、経済の回復を図る時期を迎えている。政府による経済対策は、貧困層支援・職業訓練等の生活支援、国営企業の救済、減税等企業支援の3つの柱からなるが、厳しい財政状況のため余力は限られている。
6月8日から16日にかけて実施した在インドネシア日系企業へのアンケートによると、駐在員を日本に一時帰国させている企業は約5割であり、そのうち約6割の企業で3カ月以内のインドネシアへの再入国を予定するものの、感染状況を注視して判断する姿勢がみられる。5月時点の生産・稼働状況は、顧客からの受注減を主要因として、8割の日系企業で悪化した。現在、在庫調整などで対応しており、サプライチェーンを変更する企業は少数にとどまっている。また、リモートワークが広がっており、在宅勤務やオンラインを活用した営業活動が定着するとの見方もある。
投資戦略については、約7割の日系企業が現状維持としており、インドネシアの将来性への期待がみられる。ただし、感染拡大防止や経済再開に長い期間を要した場合、ベトナムやタイなど感染拡大防止に成功し、いち早く経済再開を進めたライバル国よりも投資先としての評価を下げる可能性もあり、状況を注視していく必要がある。
【国際協力本部】