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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年8月27日 No.3465 ポストコロナを見据えた農業・食品産業のあり方を聴く -農業活性化委員会企画部会

経団連は7月15日、農業活性化委員会企画部会(澁谷直樹部会長)をオンラインで開催し、食農夢創の仲野真人代表取締役から、農業・食品産業のコロナ禍での取り組みやSDGs(持続可能な開発目標)の達成を見据えた今後の展望等について聴くとともに懇談した。講演の概要は次のとおり。

新型コロナウイルス感染症の拡大による移動制限や物流の停滞、外食産業における休業や時短営業などの影響から、農林水産物・食品の輸出や消費が大きく落ち込んだ。

農林漁業者にとって非常に困難な状況となる一方で、新しいビジネスの萌芽として、新たな異業種連携の動きがみられた。例えば、外国人技能実習生の来日がストップするなか、人材不足となった農林漁業と、営業自粛で人材過剰となった観光業界等との間での人材マッチングが進んだ。こうした業界をまたいだ人材交流により、各業界が抱える問題の解決だけでなく、生産現場の課題と消費者ニーズの相互共有が図られることで、今後の地域における新たなイノベーションの創出が期待される。

また、外食業界とEC業界の連携により、販路を失った食材を宅配業者が販売するという取り組みもあった。農林漁業者の販路支援だけでなく、EC業界における商品ラインアップの拡充により、今後、新規ユーザーの獲得にもつながることが期待される。

新たな連携を踏まえ、ポストコロナを見据えた農業・食品産業に関する3つのプラットフォームを提言する。

1つ目は、人材プラットフォームの構築である。農林漁業、外食業界、観光業界等が連携して人材を融通し合う仕組みを構築することで、各業界における閑散期と繁忙期を考慮しながら人材の流動性を高めることができる。

2つ目は、食農プラットフォームの構築である。農協とも連携し、民間企業が積極的に地域ごとの生産者・販売先とでプラットフォームを構築することで、生産者の販路が多様化し、非常時に特定の販路を失った場合にも収入の減少を防ぐことができる。

3つ目は、流通プラットフォームの構築である。コロナ禍でのEC需要の拡大による物流事業者の雇用環境の改善が課題となっている。すでにある市場の仕組みを活かして物流・流通拠点を設け、共同配送等に取り組むことで物流事業者の負担を減らすことが可能となる。

当社は、農業・食品産業に関連した多様な業種の連携促進に貢献することで、「食農未来都市」の実現を目指したい。「食農未来都市」とは、各地域で地域商社等を情報発信拠点に、食・農と観光、新エネルギー、医療・福祉、スポーツ、教育、伝統文化等とが融合したまちのことを表している。融合の例としては、食・農とスポーツであれば、東京オリンピック・パラリンピックの選手村においてGAP(Good Agricultural Practice、農業生産工程管理)を取得した食材の使用が基準となったことが挙げられる。食・農を軸にさまざまな産業が連携し、地域に貢献する取り組みを展開することで、SDGsの実現にもつながることが期待される。

◇◇◇

農業活性化委員会は、わが国農業・食品産業の成長産業化に向けて、多様な主体による連携促進に向けた具体的な取り組みを今後も加速していく。

【産業政策本部】

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