経団連は8月3日、東京・大手町の経団連会館で環境安全委員会環境管理ワーキング・グループ(吉住正浩座長)を開催した。2019年度から化学物質排出把握管理促進法(化管法)の見直しに向けた検討が始まり、現在、政令改正に向けた準備が進められている。そこで、経済産業省化学物質管理課の濱口千絵化学物質リスク評価企画官と町田宏之国際担当課長補佐から、化管法の見直し内容およびわが国を取り巻く化学物質管理をめぐる国際動向について説明を聴くとともに意見交換を行った。概要は次のとおり。
■ 化管法対象物質の見直し
00年に施行された化管法は、化学物質に対する管理について事業者による自主的な改善促進を目的とし、PRTR(化学物質排出移動量届出)制度およびSDS(安全データシート)制度で構成される。
前者は、事業者が対象化学物質の環境中への排出量等の把握と国への届け出を実施し、国が届け出の集計結果や届け出対象外の推計排出量を公表する制度である。後者は、対象化学物質および当該化学物質を含有する製品を事業者間で譲渡・提供する際に、当該化学物質の性状および取り扱い情報の提供を義務付ける制度である。
今回の見直しでは、従来の製造輸入量から同PRTR制度で蓄積された排出量データをばく露情報の主な指標とし、対象物質の選定が行われた。その結果、PRTR対象物質数は現行の462物質から522物質、SDS対象物質数は現行の562物質から656物質になる予定である。年内に改正政令が公布され、新たな対象物質について、PRTRに基づく排出量等の把握とSDSの提供が22年4月に、PRTRの届け出が23年(届出期間は4~6月)に開始される予定であり、事業者の皆さまに対応いただきたい。
■ 化学物質管理に関する国際動向
02年、持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)がヨハネスブルグで開催され、20年までに化学物質の悪影響を最小化させる目標が策定された。目標年を前に、アジア諸国でも化学物質規制の整備が急速に進展している。
目下、国際化学物質管理会議において、20年以降の枠組み等が議論されており、適正管理の対象の廃棄物への拡大や、化学物質に関する情報をステークホルダーにどう伝達するかなどが論点となっている。
そのほか、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約において、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)、その塩および関連物質を廃絶対象物質に追加する決議がなされたほか、EUではPFOA類似のフッ素化合物全般を、REACH(欧州化学物質管理規則)のもとで規制する動きがある。
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意見交換では、化管法の施行時期に関し、川下産業から、システム設計に必要な情報としてSDSの早期提供を求める声が上がった。これに対し川上産業からは、川下の事業者に提供する製品に含まれる対象化学物質に関し、施行前に情報提供を行う意向が示された。経産省からは、新規対象物質への移行に伴う事業者の課題等について把握し、今後の制度運営に活かしたいとの説明があった。
【環境エネルギー本部】