経団連のイノベーション委員会(山西健一郎委員長、畑中好彦委員長、田中孝司委員長)は9月18日、提言「EdTech推進に向けた新内閣への緊急提言~With/Postコロナ時代を切り拓く学びへ」を公表した。同提言では、今後1年以内にすべての公立小・中・高等学校においてEdTechの実質的な活用を確実に開始するために、財政措置等、早急に実施すべき施策を示した。
■ 新型コロナウイルスと学校教育
新型コロナウイルス感染拡大に伴う学校の臨時休業によって、多くの学校で学びに遅れが生じている。文部科学省の調査(注)によると、臨時休業を実施した小・中・高等学校の半数以上が同時双方向型のオンライン指導を受けられず、デジタル教材もあまり活用していないことがわかった。教育のデジタル化に消極的な学校と積極的な学校との間に大きな教育格差が生じているのが学校教育の現状である。
■ 必要となる環境整備
学びの遅れを取り戻し教育格差の拡大を防ぐため、そしてEdTech活用を前提とした教育へと転換するためには、(1)ハード(2)ソフト(3)教育人材――の観点から、国家予算を投じ、一刻も早い環境整備が必要である。
(1)ハード面
GIGAスクール構想の前倒しによって小中学生への一人一台端末の整備が進んでいるが、高校生への一人一台整備も国費投入で推進すべきである。さらに、経済的に困窮している家庭などに対して、家庭用端末のデータ通信費の一定額を手当てするなどの措置も求められる。(2)ソフト面
ハード面の整備が進む一方、教育アプリ等を購入する資金がなく、EdTechを実践できていない学校も少なくない。学校が購入する教育アプリの費用の複数年度手当や「EdTech導入補助金」の拡充等を進めるべきである。また、将来的には、教科書を紙からデジタルへ完全移行させるべく、デジタル教科書の無償化や授業時数の制限の廃止等の制度整備を進める必要がある。(3)教育人材面
学校現場でのEdTech導入を進めるにあたって、現場の人材と、それを確保するための予算は大きく不足している。ICT支援員やGIGAスクールサポーター等の人材確保のための政府予算の拡充や、プログラミングアプリ等の教育アプリの使い方、授業方法などの教員研修費用の手当て等を急ぎ進めるべきである。
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EdTech推進に向けては、ハード・ソフト・人材の整備のみならず、教育のあり方そのものを見直すことも必要である。今後、経団連は教育制度改革や教員の働き方改革、学校や家庭での学習データ活用、EdTech導入の効果検証方法、格差是正に向けた対応など、中長期的に求められる施策について検討を進めていく予定である。
(注)「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた公立学校における学習指導等に関する状況について」(2020年7月17日) https://www.mext.go.jp/content/20200717-mxt_kouhou01-000004520_1.pdf
【産業技術本部】