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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年10月8日 No.3470 経団連企業人政治フォーラムが講演会を開催 -渡部笹川平和財団上席研究員が講演

経団連企業人政治フォーラム(大塚陸毅会長)は9月23日、オンラインでの講演会を開催し、渡部恒雄笹川平和財団上席研究員から、「新型コロナ感染と米国大統領選挙の動向」と題する講演を聴いた。概要は次のとおり。

■ 新型コロナ感染と人種差別反対運動

新型コロナウイルス感染拡大当初の今年3月、トランプ大統領の支持率は、2017年の政権始動以来、最も高い数字を記録した。新型コロナ対策への評価も高く、米国の過去の政権同様、危機時に政権への求心力が働いたためといえる。しかし、6月1日、トランプ氏が、白人警官による黒人殺害事件に抗議するデモ隊を、自分の選挙アピールのためだけに強硬排除したことから潮目が変わり、支持率は大きく変わらないが、バイデン候補優位と考える選挙予測専門家が増えた。

■ 経済再開を優先するトランプ政権の再選戦略

トランプ大統領の売りは好調な経済と失業率の低さであったが、新型コロナの影響により、今年4月の失業率は、リーマンショック時の10.0%を上回る14.7%にまで達した。過去の大統領選挙では、景気後退下においては現職が敗北している。トランプ氏は、新型コロナの拡大について中国の責任を問うことで自身の対応の拙さから国民の目をそらすとともに、バイデン候補と中国を敵役とするシナリオのもとに批判を進めてきた。これは、それなりに効果があったが、実際にはトランプ氏こそ、習近平国家主席とディールをしたいと考えていることが、ボルトン前大統領補佐官の回顧録で暴露された。

■ 狭い再選戦略をとってきたトランプ陣営

トランプ陣営は、好調な経済を背景に、無党派層や民主党支持者に支持を拡大することもできたが、トランプ氏の分断的な性格と、コアな支持層の存在がこの道を妨げた。その結果、16年の大統領選挙同様、コアな白人支持層の支持を固め、中西部とフロリダなどの接戦州で無党派層を獲得して勝利することが唯一の再選の道となっている。しかし、9月21日時点での全米の世論調査の平均では、これらの州においてバイデン候補が優位の状況にあり、トランプ再選の道は容易ではない。残り2カ月で流れを変えるためには、バイデン候補がテレビ討論で失態をおかすことや、郵送票の集計を打ち切って裁判闘争に持ち込むことなど、逆転要素がないわけではないがその道は狭い。

■ 新型コロナ感染による米中関係悪化の加速

もともとトランプ政権の対中政策は割れていた。トランプ大統領と財務省、国家経済会議(NEC)は、中国との関係維持は米国経済と大統領選挙再選のために必要と考えていたが、他方で、国家安全保障会議(NSC)や国防総省、通商担当者は中国には厳しかった。しかし、新型コロナにより経済悪化が避けられなくなった今、中国に矛先を向けることで選挙を有利に運べる状況となり、対中強硬策で政権内が一致した。これにより、米中関係の悪化がさらに加速することとなった。

■ 米国の対中強硬と日米関係

6月後半から7月にかけて、トランプ政権幹部が一連の対中強硬演説を展開するなか、米国全体での中国への警戒感はかつてないほど大きくなり、軍事・経済両面での対中牽制策が強まっている。一方で、米国企業としては、中国市場からの利益を失いたくない。そこで考えられるのが、中国経済を完全に切り離さないが、競争的にコアな技術に絞って中国への流入をブロックする「部分的デカップリング」という方向性である。

日本にとっては、米国の中国に対する懸念の高まりにより、同盟国としての価値が高まるため、安全保障の機能と信頼性を高めるよい機会となる。他方、トランプ政権の一方的な対中強硬策は、日本経済にマイナスとなるリスクもある。今後、日本としては、「自由で開かれたインド太平洋構想」(FOIP)で、米中の間に立つ豪州、インド、東南アジアなどとの連携を強め、米国とともに適切な対中戦略をかたちづくることで米国の一方的な「デカップリング」を防ぐとともに、中国の行動を協調的な方向に変えていくための影響力を行使すべきである。

【総務本部】

経団連企業人政治フォーラム(Keidanren Political Forum)のご案内

大臣や主要な政治家、有識者を招いた講演会の開催などを通じ、企業人の政治参加意識の高揚と、企業人と政治とのコミュニケーションの促進に務めています。
企業人の声で政治を変えるために、皆さまのご参加をお待ちしております。

◆ 入会のご案内は、ウェブサイトをご参照ください
URL: http://www.bpf.jp/

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