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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年10月15日 No.3471 最高裁後任判事承認の選挙への影響 -ワシントン・リポート<78>

9月18日、米国連邦最高裁判所のルース・ベイダー・ギンズバーグ最高裁判事が亡くなった。支持者から「RBG」の通称で親しまれていた彼女は、近年、膵臓がんとの闘病が報道されていたが、大統領選の1カ月半前というこの時期の訃報に全米に衝撃が走った。大統領選だけでなく、上院議員選挙も大きな影響を受ける可能性がある。後任判事は大統領が指名し、上院が承認を行う。これまでトランプ大統領の新型コロナウイルス対応失敗や人種問題が議論の中心になっていた選挙に、最高裁をめぐるイデオロギー対決が加わる可能性がある。

民主党では、RBGというリベラル派判事の重鎮を失い、その危機感は強い。2018年の保守派のカバノー判事承認は、保守中道派の後任としてイデオロギー的バランスを変えるものではなかったにもかかわらず、民主党側はカバノー氏の人格を否定するほどの個人攻撃によって阻もうとした。今回はRBGの後任に保守派判事が候補として指名されることになり、民主党ベースはさらに強硬に反対するであろう。しかし、民主党支持者はすでに反トランプで固まっており、その盛り上がりレベルは今でも振り切っているといえ、さらなる民主党票増加につながるかは不透明である。

共和党にとってRBGの後継としてトランプ大統領が指名した保守派エースのエイミー・コニー・バレット連邦高等裁判所判事が入ることは、最高裁において保守派が安定多数を占めるという数十年来の宿願成就を意味する。妊娠中絶反対の社会的保守派の士気は高まり、トランプ支持に踏み切れないでいる一部保守派や従来の共和党支持者の「共和党大統領候補」支持へのある程度の回帰が見込まれる。「トランプvs非トランプ」という選択から「共和党候補vs民主党候補」の選択になれば、個人的に不人気なトランプ大統領にとって有利な展開となる。

一方、上院議員選挙への影響は若干異なる可能性がある。民主党地盤州(メーン州、コロラド州)の共和党現職議員はさらに苦戦し、共和党州(モンタナ州、サウスカロライナ州、ジョージア州など)の共和党議員には有利に働くと考えられる。18年の中間選挙において「カバノー効果」で共和党支持州がより本来の共和党支持に傾いたのと同じ動きが起これば、共和党州の上院議席を守りやすくなる。

また一部では、16年に保守派のスカリア判事急死後、オバマ前大統領が指名した後任判事候補の審議を当時も上院多数派だった共和党が選挙後まで拒否していながら、今度は承認を急ぐ矛盾が指摘されている。ただし、民主党も当時真逆の立場を取っており、どちらも一貫性はない。

選挙の終盤に出現したこの問題が共和党に追い風となるのか――。通常の大統領選であれば、最高裁問題を中心にリセットされたであろうが、パンデミックという異常事態が続くなか、「リセット」とまでいかずとも残りのカードが一度「リシャッフル」されたといえる。

【米国事務所】

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