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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年10月22日 No.3472 コロナとの闘い~最前線から見た復興のシナリオと企業への期待 -企業行動・SDGs委員会

経団連は9月28日、東京・大手町の経団連会館で企業行動・SDGs委員会(二宮雅也委員長、中山讓治委員長、吉田憲一郎委員長)を開催し、世界保健機関(WHO)においてユニバーサル・ヘルス・カバレッジ/健康づくりを担当する山本尚子事務局長補から、新型コロナウイルス感染症の世界的状況と今後の課題、よりよいポストコロナの社会づくりのための民間企業への期待などについて説明を聴くとともに意見交換を行った。概要は次のとおり。

■ 新型コロナが与えた世界へのインパクトとWHOの対応

2015年にSDGs(持続可能な開発目標)が採択されてから、貧困、母子保健、教育などの分野で世界的な進歩や改善がみられたが、新型コロナの影響により、改善前の状態に逆戻りする懸念がある。健康・衛生面における最大の課題は「健康格差の拡大」であり、その背景には所得格差がある。特に、低所得国や貧困地域では、マスク、医薬品や検査キットなど、基本的な感染対策物資が行き届いていない。

WHOは、基準づくりをする国際機関としての中立性を保つため、これまで民間や個人からの寄付を受けていなかったが、貧困地域の現場支援のために「新型コロナウイルス感染症連帯対応基金」を設立し、民間からの資金の受け入れを開始した。現在、約250億円の支援金が集まっており、世界各地の事務所と連携しながら物資・技術・サービス支援のために活用している。

また、5月末には、世界に先駆けて、新型コロナからの復興に向けた宣言を発表した。自然保護、施設設備への投資、健康的なエネルギーへの移行、健康な食品の促進、健康的な都市開発、化石燃料への補助金の中止を掲げた宣言には、100を超える国々の約5000万人に上る医療・福祉関係者から賛同が寄せられた。

■ 復興のシナリオと企業への期待

公衆衛生における日本の強みは、医療現場を中心とする現場人材の質の高さである。また、新しい生活様式に適応するための工夫力や柔軟性も優れている。他方、ITインフラやITリテラシー、海外に向けた発信力などに課題がある。健康問題が世界共通の最重要課題となった今、「より健康で自然と調和した社会づくり」に向けて、3つのS「Science & Innovation(研究、開発、データ、IT、医療提供)」「Sustainability(持続可能性のある成長戦略)」「Solidarity(国際社会、国、地域、コミュニティーの連帯)」が必要である。特に、日本企業には、現場実行力・人材、イノベーション・技術開発、研究・データ、生産力、資金力に期待したい。また、SDGsに基づいた成長戦略を実施し、事業を通して、雇用や生きがいの創出、健康的な都市開発を進めることで、人々の命、健康への貢献を期待する。

◇◇◇

意見交換では、健康問題が世界の最重要課題であることに共感する声が相次いだ。これに対して山本氏は「WHOにおいて、日本はアジア太平洋地域のグループに属している。地域内の途上国や貧困地域では、基本的なヘルスサービスの不足のみならず、水衛生や住居等社会のインフラ、安全で栄養価の高い食料へのアクセスなど課題があり、島しょ国では植民地時代の医療関連の施設や設備が老朽化している。日本には、リーダーシップを発揮し、近代化支援を行ってほしい」とコメントした。

【SDGs本部】

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