Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年10月29日 No.3473  少子化問題への対応について翁日本総研理事長から聴く -人口問題委員会

経団連は10月7日、人口問題委員会(隅修三委員長、宮本洋一委員長、清水博委員長)をオンラインで開催し、日本総合研究所の翁百合理事長から、「少子化の流れをどう変えるか~選択する未来2.0を踏まえて」をテーマに説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 選択する未来2.0のエッセンス

「選択する未来2.0」は、経済財政諮問会議のもとの有識者懇談会である。

前身の「選択する未来」委員会が2014年に取りまとめた「2020年頃までに取り組むべき対応」の進捗状況の検証、今後の必要な対応の検討を目的として立ち上げられ、7月に中間報告を取りまとめた。

現在、わが国の出生率は低下傾向にあり、潜在成長率は横ばいで、東京一極集中も改善されていない。「選択する未来2.0」では、「選択する未来」が掲げた「2020年代初めまでのジャンプスタート」は実現していないという認識のもと、議論を行った。

中間報告では、コロナショックがもたらした意識・行動の変化や明らかになった課題を踏まえ、この数年で必要となる集中的な取り組みとして、(1)教育、企業・社会の仕組みや慣行の変革(2)デジタル化・リモート化の推進(3)人的投資等の無形資産への投資拡大(4)就職等の包摂的な支援で格差拡大防止――を掲げている。

特に少子化対策の観点からは、個々人が多様な働き方のもとで活躍し、仕事と子育てを両立できるようにすべきであり、具体的には、若年層のキャリアアップ支援、男性の育休取得促進、女性の正規社員化等、男女ともにワーク・ライフ・バランスを実現することが重要である。

変革の機運が高まっている現在を大きなチャンスととらえ、多様性を尊び、想像力を持ち合わせた多様な人材が次々とイノベーションを起こせる社会、個人が自由度の高い働き方や暮らし方ができ、豊かさを感じられる社会の実現に向けて取り組むべきである。

■ 少子化の流れを変えるために

19年の出生数は86.5万人となっているなか、コロナ禍による失業率の上昇が出生率にマイナスの影響を及ぼすことを懸念している。出生率には、労働時間、教育費、保育定員等、さまざまな要因が影響することが指摘されている。労働時間については、長時間労働は減少傾向にあるものの、出生率の高いスウェーデン等と比較して、わが国の女性の労働時間は二極化しており、働き方の選択肢が少ないことが推測される。これは、日本において育児における夫婦の役割や家族のあり方が固定的であることが一因だと考えられる。

少子化の流れを変えるためには、(1)時間に縛られない働き方やリモートワークの推進等の働き方の柔軟化(2)女性のキャリアアップ支援(3)標準家族主義からの脱却(4)保育サービスの充実(5)若者の所得向上――等に取り組むべきである。加えて、教育費負担の軽減や、高額な不妊治療への支援、第3子、第4子といった多子世帯への経済的支援も必要である。

【経済政策本部】