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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年10月29日 No.3473 科学技術・イノベーション基本計画策定に向けた議論の状況 -イノベーション委員会

経団連は10月2日、イノベーション委員会(山西健一郎委員長、畑中好彦委員長、田中孝司委員長)をオンラインで開催し、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の上山隆大常勤議員から、「科学技術・イノベーション基本計画策定に向けた議論の状況」と題して説明を聴くとともに意見交換を行った。
説明の概要は次のとおり。

■ 「Society 5.0」とは

第1期から第5期科学技術基本計画に至るまで、対象範囲は次第に広がりをみせ、第5期ではSociety 5.0という社会像を打ち出した。Society 5.0とはサイバー空間とフィジカル空間を融合し、経済発展と社会的課題の解決を両立させる社会である。解決すべき社会課題や目標とする経済発展の定義、つくり出すべき価値について議論している。

Society 5.0で実現する社会像について国民に調査したところ、ヘルスケア・キャッシュレスは不安が大きいとわかった。その不安を取り除くことも目的の一つとして計画を立てるべきだと考えている。

■ わが国の科学技術・イノベーション政策が置かれた現状

新型コロナウイルス感染症拡大はわれわれにさまざまな問題を突きつけた一方、科学技術への国民の期待も高めた。ポストコロナ時代を見据え、社会経済構造の抜本的な見直しや新たな国際秩序の模索を開始するなか、スピード感・危機感を持ってSociety 5.0の実現に向けた取り組みを進める必要がある。社会構造変革のための研究活動を含めたデジタル化や、産業構造転換のためのスタートアップ支援、イノベーションへの投資拡大を進めていく。

広い意味での安全・安心を備え、国家安全保障やセキュリティクリアランス等について議論できるシンクタンク構想を練っている。最先端技術は地政学的な問題が関係する。日本のこれらの分野の研究力が相対的に落ちてきていることも踏まえ、国家戦略を考えていくべきである。

科学技術基本法を抜本的に改正し、人文・社会科学を対象に加えイノベーションの定義も変え、システム変革の要となる人材育成を盛り込んだ。法改正により司令塔を機能強化し、科学技術・イノベーションの一元的な推進事務局となることを目指す。

■ 次期科学技術・イノベーション基本計画の検討状況

現在、素案づくりの段階である。12月には原案を作成し、全国各地で基本計画を説明するキャラバンやパブリック・コメントを行って国民からの批判や意見を聞き入れたい。

検討の方向性の案として、(1)Society 5.0の具体化(2)スピード感と危機感を持った社会実装(3)人類の幸福や感染症・災害、安全保障環境などを念頭に置いた科学技術・イノベーション政策と社会との対話・協働(4)研究力の強化と官民の研究開発投資のあり方(5)新しい社会を支える人材育成と国際化――の5つの柱として取りまとめた。

Society 5.0には日本の価値観である共益が含まれる。この「Japan Model」で国際社会をリードすることがコロナ禍と地政学的変化に対応する方法の一つである。

社会経済構造のスピード感を持った変革のためには、科学技術・イノベーション政策が必要である。Society 5.0のコンセプトをつくった第5期と同様、産業界と今後とも協力していきたい。

【産業技術本部】

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