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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年11月5日 No.3474 ニューノーマルにおける観光振興のあり方について聴く -観光委員会

経団連は10月16日、観光委員会(菰田正信委員長、新浪剛史委員長、武内紀子委員長)をオンラインで開催、JTB総合研究所の小里貴宏取締役兼執行役員コンサルティング事業部長から、ニューノーマルにおける観光振興のあり方について聴くとともに懇談した。講演の概要は次のとおり。

新型コロナウイルス感染症の拡大以前である2017年の国連世界観光機構の推計によると、グローバルでの交流人口は10年から年率3.3%のペースで増加し、特にアジア地域の伸び率が高いと予測されていた。日本もインバウンドの増加が見込まれ、付加価値の創造により、1人当たり消費額の引き上げも可能と考えられてきたが、訪日外国人旅行消費額はコロナ禍で2020年1-3月期は7071億円にとどまった(19年は全体で約4.8兆円)。国内の旅行消費額も20年の1-6月期は4.3兆円に激減した(19年は全体で約22兆円)。日本の観光の経済効果が新型コロナ前の水準に戻るのは24年~25年との見通しもあり、エアラインをはじめとする観光を支える人材の流出が懸念される。

今後のツーリズム産業には、交流人口や関係人口づくりに向けて、1泊2日や団体周遊型観光など従来の旅行スタイルを見直し、高付加価値化を図ることが求められ、滞在型観光としてのワーケーションやブレジャー(「Business」と「Leisure」を組み合わせた造語。出張行程の前後に休暇を追加するなどして余暇目的のプライベート旅行を実施すること)の促進が欠かせない。滞在型観光には、その土地ならではの「体験価値創造」が重要であり、ツーリズムに関わる企業が地域でのつながりを強め、ローカル経済圏の形成等に取り組む必要がある。現状のツーリズム産業は、第一次から第三次産業までつながりが深いものの、業際を取りまとめた形態であり、産業としてのまとまりによる強みが発揮できていない。

ニューノーマルを見据えた「体験価値創造」の新たなコンテンツとしては、その土地での自然とのふれあいやフィジカルなアクティビティー、文化交流などを楽しむアドベンチャーツーリズムなどの推進が考えられる。アドベンチャーツーリズムの単価は国際的にみて、日本で行われてきたオプショナルツアーよりも高額であり、観光を軸にカメラや釣具、自転車をはじめとする異業種連携を通じて付加価値の向上につなげることも期待できる。

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会合に先立ち、経団連は、観光の新たな価値の創造に向けた取り組みの一環として、10月12日に日本観光振興協会ならびにワーケーション自治体協議会と「ワーケーションの推進に向けたモデル事業の実施に関する覚書」を締結した。今後、安心・安全対策の徹底を前提に、「TRY!ワーケーション」と称したモニターツアーを実施し、ワーケーションの推進に向けた機運醸成や企業における本格導入を模索していく。

【産業政策本部】

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