経団連は、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)を契機とした働き手などの地方居住に関する意識の変化を踏まえ、地方の活性化に欠かせない東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)からの人の流れの創出をテーマにした提言「with/postコロナの地方活性化―東京圏から地方への人の流れの創出に向けて」を取りまとめ、11月17日に公表した。
■ 人の流れに関する現状と課題
高度成長期以降、豊富な就業機会、充実した生活サービスなどを背景に、東京圏の人口はほぼ一貫して転入超過が続き、地方は人口減少が進行してきた。
このような東京圏への人の集中は、新型コロナを契機に変化の兆しがみられる。テレワークの経験が過密回避への意識と相まって地方への関心を高めている。また、企業における本社機能や拠点のあり方の見直しが、働き手の地方居住を後押しする可能性がある。
地方活性化において、ボトルネックとなってきた東京圏への一極集中の流れが転換することへの期待が高まるなか、わが国全体の持続可能性を確保していく観点から、東京圏からの人の分散と地方への人の流れの創出について、議論をさらに深めるタイミングを迎えている。
新型コロナを受けた環境変化をチャンスととらえ、地方への人の流れを創出するうえでは、人を惹きつける地域づくりが必要である。具体的には、働く環境・生活環境の整備、地域資源やデジタルを活かした特色ある地域づくり等が求められる。
■ 取り組みの視点
取り組みにおいて必要となる視点は、(1)内発型の地域づくり(2)地方自治体の広域連携の推進(3)地方におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の促進――の3つである。
(1)内発型の地域づくりにおいては、地方自治体を中心に、地元の企業や大学等が大企業と連携しながら、市場の拡大を図っていくことが重要である。すでに経団連会員では地域資源やデジタル技術・データを活かし、地方の経済社会の活性化に資する取り組みを展開しており、提言では、「事例編」として58の企業・団体の取り組みを紹介している。
(2)地方自治体の広域連携においては、テーマに応じた地方自治体間の柔軟かつ重層的な連携が可能となるよう、「連携中枢都市圏構想」を推進するとともに、円滑な利用に向けて国による制度体系の再構成や自治体による住民への理解浸透の取り組みが欠かせない。
(3)地方におけるDXの推進にあたっては、地方自治体におけるデジタル3原則を徹底するとともに、政府が強力な推進体制のもとで、地方自治体のデジタルガバメント化を牽引することを求める。
経団連は、政府・地方自治体・業界団体等の地域における多様な担い手との連携を強化し、魅力的な地域づくりに向けて主体的に取り組んでいく。
あわせて、地域社会・個人の主体的な参加による「オーナーシップ型」の地方活性化を目指すコミュニティーのあり方についても検討していく。
【産業政策本部】