経団連のヨーロッパ地域委員会(越智仁委員長、佐藤義雄委員長)は12月3日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、パトリシア・フロア駐日欧州連合代表部代表・特命全権大使から、英国の欧州連合(EU)離脱の現状と見通しについて説明を聴いた。概要は次のとおり。
英EU間の貿易協定をめぐる交渉は最終段階にあり、現在、ロンドンとブリュッセルにおいて交渉が進められている。英国のEU離脱に伴う移行期間が終了する2021年1月1日までに協定を発効すべく、EU側は24時間体制で交渉に臨む用意があり、英国側にも同様の姿勢を期待する。EU離脱後も、英国はEUにとって重要な近隣国であることに変わりはない。期限内に高水準で包括的なパートナーシップを締結し発効できるよう、EU側は全力で取り組むが、いかなる犠牲を払ってでも合意するというわけではない。
未解決の争点は3点ある。1点目は、英EU間の協定を確実に履行するための実効性ある法と規則の執行メカニズムの確保である。2点目は、公平な競争条件の確保である。無税無枠というEU単一市場へのフルアクセスを英国に認めるならば、英EU間で公正な競争環境を確保することが求められる。3点目は漁業権について、長期的視野を持って、持続可能な合意を形成することが必要である。
なお、北アイルランドの和平を損なわないことは、同交渉の最も基本的な条件である。現在、英国議会で審議中の「国内市場法案」は、離脱協定における今までの合意を反故にする内容であり、EUとしては英国が離脱協定を順守するよう求める。
仮に期限内に合意されたとしても、21年1月1日からは英EU間の事業環境には大きな変化が生じる。通関等の行政負担の増大や輸送期間の長期化が予想され、貿易障壁が生じることは不可避である。今後は原産地証明やライセンス等について、英EU双方の規制に準拠する必要があり、英EU間にまたがってビジネスを行う企業および個人は、多大な影響を受けることとなる。多くの日本企業が英EU双方で事業活動を行っているが、合意に達するか否かにかかわらず、すべての事態に備えておくべきである。
英国のEU離脱後もEUは日本と協力し、G7やG20等の場を通じて多国間主義に基づく国際協力を推進していきたいと考えている。新型コロナウイルス感染症対策や保護主義への対応に加え、欧州委員会が重要課題として掲げている気候変動問題やデジタル化への対応等について、日EUの連携強化を図っていきたい。
【国際経済本部】