経団連は11月26日、中国輸出管理法に関する懇談会を開催し、中国・北京の金杜法律事務所の劉新宇パートナー弁護士から、中国輸出管理規制の最新動向と日系企業としての対応策について説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ 立法までの経緯と背景
中国輸出管理法は、2017年の草案起案以降、3度の審議を経て、今年10月の全国人民代表大会常務委員会において採択され、12月1日から施行される。採択から施行まで1カ月強と、周知期間が極めて短いことから、輸出管理をめぐる国際情勢に早急に対応しようとする姿勢がうかがえる。立法の背景には、科学技術をめぐる中国の影響力増大や、複雑な国際情勢に適応した輸出管理法制整備の必要性の高まりが垣間見える。
■ 重要条文と実務上の注意点
輸出管理の対象には、貨物・技術に加え、サービスも含まれる。デュアルユース用品、軍用品、核のほか、国の安全・利益保護に関連する品目も対象だが、この定義は不明確である。今後、具体的な管理品目リストが公表予定であり、ハイテク分野や化学、エネルギー、電子、軍事などが規制の重点となる見込みである。
また、中国から輸入した管理品目を他国へ輸出する「再輸出」についても規制が導入された。定義は不明確だが、中国からの輸入品を組み込んだ製品を第三国に輸出する場合に中国政府の許可が必要となれば、日系企業にとっても負担は大きく、サプライチェーン運用効率の低下を懸念する声が上がっている。
さらに、中国企業の従業員が、当該国の在中外国人に技術等を提供する際、当該技術が中国国外に持ち出されなくても、中国から当該国への輸出とみなす「みなし輸出」についても規制が導入された。条文上は、中国の主体が国外において外国の主体に輸出管理対象品目を提供した場合も規制対象になると解される。中国の外資系企業における中国人・外国籍技術員間の業務が若干阻害される懸念が指摘されており、今後公布される関連法規を注視する必要がある。
その他、国家の安全・利益を害するおそれのあるエンドユーザーおよび輸入業者を禁輸対象とする規制リスト(米国のエンティティリストに類似するもの)や、輸出管理措置を濫用し、中国の安全・利益を害した国または地域に対し同等の措置の履行を可能とする対等原則の運用についても注意する必要がある。
日系企業には、将来、サプライチェーンの見直しや営業秘密保護のための環境整備、コンプライアンス体制の見直し等が求められる可能性がある。今後公表される実施細則を的確に把握してほしい。
【国際経済本部】